CMS債(CMSリンク債)とは
記事作成日:2019年8月27日
最終更新日:2021年9月16日
CMS債とは、スワップレートと別の金利を交換するCMS(コンスタント・マチュリティ・スワップ)取引に連動した債券で、スワップレートの変動に応じて、クーポン支払いの利率が変化する仕組債です。単純にスワップレートにクーポンの利率が連動するCMSフローター債や、2つのスワップレートの金利差にクーポンの利率が連動するCMSスプレッド債があります。
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CMS(コンスタント・マチュリティ・スワップ)とは
CMS(Constant Maturity Swap:コンスタント・マチュリティ・スワップ)とは、交換する金利の片方が常に同じ特定の残存年限の長期のスワップレートを参照する金利スワップ取引のことを意味します。例えば、10年スワップレートとの交換を行うスワップ取引のようなものが該当します。
常に同じ満期(Constant Maturity)の金利とのスワップを行うので、コンスタント・マチュリティ・スワップ(Constant Maturity Swap)となります。
CMS債(CMSリンク債)とは
CMS債とは、CMSに連動してクーポン利率が変化する仕組債のことを意味し、CMSリンク債、CMS連動債などと呼ばれる場合があります。元本には基本的に特別な仕組みがないため、満期まで保有すれば債務不履行など特殊な状況にならない限り元本を確保できます。
一般的にCMS債といった場合は、クーポン利率がCMSに連動して決定されるCMSフローター債(変動利付債)を意味します。例えば、CMSフローター債は「20年スワップレート-α」(αは発行条件により異なり、固定値だけではなく、短期の変動金利が含まれる場合がある)のような形で、スワップレートに連動する形でクーポンが決まります。クーポンの利払いごとに利率が計算されるため、CMSフローター債のクーポンの利率は利払いごとに変動します。
なお「フローター」は「変動利付債」を意味するため、「フローター債」とすると債券が重なると考えることができるため、重ねて「債」という言葉をつけない場合もあります。
他には、CSMスプレッド債があり、クーポン利率が2つのスワップレートを利用して算出されます。例えば、「20年スワップレート-2年スワップレート+α」(αは発行条件により異なる)のような形で、2つのスワップレートのスプレッドに連動してクーポン利率が決定します。利払いごとにスワップレートを参照するため、利払いごとに利率は変動します。
- CMSフローター債:利率が「スワップレート-α」
- CMSスプレッド債:利率が「スワップレートA-スワップレートB+α」
CMS債のメリット
CMS債は、短期金利の代わりに長期金利に連動するような仕組みにすることでクーポン利率や最終的な利回りを高くする効果が期待できる場合があることがメリットの1つです。
また、CMS債は通常は元本部分に特殊な仕組みがないため、満期まで保有すれば債務不履行などがない限り元本を確保できることがメリットとなります。
CMSフローター債は長期金利が上昇した場合にはクーポン利率が上昇することから収益率が改善します。一般的な債券では金利が上昇すると価格が下落するため収益率は悪化しますが、CMSフローター債は金利が上昇する局面で収益率が改善することが期待できることがメリットとなります。
CMSスプレッド債は、金利水準そのものよりも、金利の期間構造の変化に応じてクーポン利率が変化します。短い年限よりも長い年限の金利の方が上昇幅は大きくなり、金利差(スプレッド)が拡大すると、CMSスプレッド債のクーポン利率は上昇し、収益率が改善します。金利水準が低くても、スワップレートのイールドカーブの形状によっては収益率が改善する可能性があることがメリットとなります。
CMS債のデメリット
CMSフローター債やCMSスプレッド債は金利が想定通りに動けばクーポン利率が上昇し、高い収益率となることが期待できますが、思い通りにならなかった場合は利率が低くなってしまい、思ったような投資効果が得られない可能性があることがデメリットです。
また、CMS債に限りませんが仕組債は流通市場が活発ではないため保有期間の途中での市場売却は難しく流動性リスクがあります。売却できる場合でも、不利な価格で売却を迫られる可能性があります。
また、CMS債をはじめとして仕組債は特別な仕組みが組み込まれていますが、複雑で分かりづらいことがデメリットとなります。どのような場合にどのような損失が発生するのか、理解が難しいことがあるのです。
まとめ
- CMS債とは、スワップレートと別の金利を交換するCMS(コンスタント・マチュリティ・スワップ)取引に連動した債券で、スワップレートの変動に応じて、クーポン支払いの利率が変化する仕組債です。
- CMSフローター債はスワップレートに連動してクーポンの利率が変化し、CMSスプレッド債は2つのスワップレートの金利差にクーポンの利率が連動します。