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変動利付債(フローター)とは

記事作成日:2019年9月6日
最終更新日:2021年9月15日

変動利付債(フローター)とは

変動利付債(フローター)とは、保有期間中の利息の利払いの利率が市場金利の動向などに連動して変動する債券(仕組債)のことを意味します。変動利付債(フローター)は、市場の金利が上がるとクーポンの利率は上昇し、市場の金利が下がるとクーポンの利率は低下します。日本では、個人向け国債の「変動10」や現時点で新規発行は行われていませんが機関投資家向けの15年変動利付国債が変動利付債として有名です。利率が発行から償還まで変わらないのは固定利付債となります。

変動利付債(フローター(floater))は、フローター債、フローティング債、フローティング・レート債、フローティング・レート・ノート(Floating Rate Note:FRN)などと呼ばれる場合があります。

なお、フローター(floater)はそれだけで変動利付債という意味になり、債券の意味を含んでいるため、フローターに「債」を付けると「債券」が二重になりますが、日本で「リバース・フローター債」のように「フローター債」という言葉が用いられることがあるため、本記事でも「フローター債」と表記する場合があります。

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変動利付債の特徴

変動利付債は、利払いごとに利率が変化します。利率は、市場金利に特定の数値を加減する場合(例:市場金利+0.5%)や、市場金利に特定の数値を乗算する場合(例:市場金利×0.6)などがあり、債券によって異なります。市場金利は短期金利が採用される場合もありますし、長期金利が採用される場合もあります。

例えば、「市場金利+0.2%」で利率が決まる変動利付債は、次のように市場金利が上がるほどクーポン利率が上がります。

変動利付債(フローター)のクーポン利率の変動の仕組み

市場金利の変動と変動利付債の債券価格

理論的には、変動利付債はクーポン利率が変化するため、市場金利が変化すれば債券価格ではなくクーポン利率が変化し、債券価格は額面金額と等しいまま、変動しないことになります。

しかし、実際の変動利付債のクーポン利率は市場金利連動して瞬時に変化するわけではなく利払いごとに変化すること、市場金利とクーポン利率は完全には一致せずに一定の加減算や乗算を行って利率が決まること、市場の需給によって売買の価格は変動することから、市場取引がある変動利付債の債券価格は変動することになります。

ただし、市場金利が変化した場合に変動利付債はクーポン利率の変動によって調整されるため、固定利付債と比べると債券価格の変動は相対的に小さくなることになります。

市場金利の変動と変動利付債のクーポン利率(利払いの利率)

変動利付債は、市場金利が上昇する場合でも利払いの利率が上昇する一方、債券価格の変動は小さいため、固定利付債と比べると金利上昇に相対的に強いことになります。逆に、市場金利が上昇すると、利払いの利率が低下する一方、債券価格の変動は小幅になるため、固定利付債と比べると金利低下に相対的に弱いことになります。

販売価格と償還価格が同じ変動利付債のクーポン利率

販売価格と償還価格が同じ変動利付債は、満期まで保有することを前提とする場合、債券の価格変動を気にする必要がなくなります。例えば、100円で販売され、100円で償還される変動利付債(途中売却でも100円で売却可能な場合)の場合、市場金利が変化した場合、利払いの利率の上下のみを考えればよくなります。

市場金利が上がればクーポン利率が上がるため投資家に有利となり、市場金利が下がればクーポン利率が下がるため投資家に不利になります。

フロア付き変動利付債

利率はそれよりも低くならない下限値(フロア)が設けられている場合があります。例えば、利率の下限値が0.8%となっている場合は、市場金利が下がって、利率を決定する式の結果がどれだけ低くなっても、クーポンの利率は下限の0.8%を下回らないことになります。フロアがある変動利付債はフロア付き変動利付債、フロア付きフローターなどと呼ばれることもあります。

投資家からすると、下限の利率が設定されている場合、最低限の利率が保証されていることになるため、一般的には有利になると考えられます。

フロア付き変動利付債(フローター)のクーポン利率の変動の仕組み

キャップ付き変動利付債

逆に利率にそれよりも高くならない上限値(キャップ)が設定されることがあります。例えば、利率の上限値が1.8%となる場合は、市場金利がどれだけ上がっても、クーポンの利率は1.8%より高くなることはありません。キャップがある変動利付債はキャップ付き変動利付債、キャップ付きフローターなどと呼ばれることもあります。

投資家からすると、上限の利率が設定されている場合、それ以上は金利上昇の恩恵を享受できないため、一般的にはキャップ付きはその分だけ不利になると考えられます。

キャップ付き変動利付債(フローター)のクーポン利率の変動の仕組み

変動利付債のメリット

変動利付債は金利上昇に相対的に強いことがメリットです。

変動利付債は金利上昇に相対的に強い

変動利付債は、市場金利が上昇した場合、連動してクーポンの利率が上昇するため、受け取る利息が増加します。固定利付債の場合、クーポン利率は変化しませんし、市場金利が上昇すると債券価格は下落します(満期保有を前提としない場合)。変動利付債は固定利付債と比べて、相対的に金利上昇に強いことになります。

変動利付債は理論的には債券価格の変動が小さい

変動利付債は、市場金利が変動した場合にクーポン利率が変化して調整されるため、債券価格の変動が小さくなります。ただし、日本の15年変動利付国債は2008年の金融危機後に需給悪化によって価格が急落した事例があり、理論通りとならない場合があります。

変動利付債は固定利付債と価格変動が異なるため分散効果が期待できる

変動利付債は固定利付債とは金利に対する価格変化が異なるため、変動利付債と固定利付債に投資することで分散効果を期待することができます。

変動利付債のデメリット

変動利付債は金利低下に相対的に弱いことがデメリットです。

変動利付債は金利低下に相対的に弱い

変動利付債は、市場金利が低下すると、クーポンの利率が低下するため、受け取ることができる利息が少なくなります。固定利付債の場合は利率は下がりませんし、市場金利が低下すると債券価格は上昇します。そのため、変動利付債は固定利付債と比べて、相対的に金利低下に弱いことになります。

変動利付債は低金利環境では需要が少なくなることがある

変動利付債は低金利環境では需要が少なくなることがあります。発行市場ではまとまった金額が売れず、流通市場では市場取引が成立しづらくなります。金利の上昇が見込みづらく、低金利の環境では、敢えて変動利付債に投資する意義が薄れ、変動利付債は需給要因によって債券価格が下落するリスクがあります。なお、個人向け国債の変動10では債券価格の変動を心配する必要はありません。ただし、発行体の信用リスクはあります。

まとめ

  • 変動利付債(フローター、フローティング債)とは、利払いの利率が市場金利に応じて変動する債券(仕組債)のことを意味します。
  • 変動利付債は、市場金利が上昇するとクーポン(利息)の支払いが増える一方、市場金利が低下するとクーポンの支払いが減ります。

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【変動利付債(フローター)とはの記事は終わりです】

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