アクティブファンドは運用スキルへの投資
記事作成日:2015年7月27日
最終更新日:2022年6月13日
アクティブファンドへの投資はファンドマネージャーの運用スキルに投資するのと同じ意味を持つことになります。しかし、アクティブファンドのファンドマネージャーの運用スキルを評価するのはとても難しいと考えられます。ファンドマネージャーの運用スキルを評価して、将来良いパフォーマンスを上げるファンドを見つけ出すのは、入手可能な情報からは限界があると考えられるためです。
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アクティブファンドとは
アクティブファンドとは、ファンドマネージャーと呼ばれる運用の担当者が投資する資産の保有比率や、株式や債券などの銘柄とその保有比率を一定の範囲内の裁量で決めて運用を行うファンドです。
アクティブファンドには、株式指数や債券指数などのインデックスをベンチマークとして設定し銘柄選択や投資比率の変更によってベンチマークを上回る運用を目指すファンドや、ベンチマークを定めずにより高いパフォーマンスを目指して運用するファンドがあります。
アクティブファンドは運用スキルへの投資
アクティブファンドは自分で株式や債券などの銘柄を選んで投資する場合とは異なり、ファンドマネージャーの運用スキルに投資することになります。
もちろんアクティブファンドには、何らかの投資戦略に基づいて設定されるため、投資戦略の考え方、投資理論に投資するということにもなりますが、基本的にはファンドマネージャーの判断・運用能力に投資することになります。
クオンツと呼ばれる高度な数学的・統計的な手法を用いて構築された定量的な投資モデルを用いて機械的に投資をする場合でも、投資モデルを構築するところにファンドマネージャーの判断が入っています。
企業の成長性や財務内容、株価の水準などから判断する個別銘柄への投資とは全く趣が変わってきます。
運用スキルは評価できるか
ファンドマネージャーの運用スキルを評価するのは実際問題かなり難しいのではないでしょうか。アクティブファンドは投資戦略の概略や過去の運用実績、運用体制、運用担当者(ファンドマネージャー)の運用経験などは明らかにされますが、ファンドマネージャーの個々の投資判断をすべて見て是非を判断することはできません。
そのため、投資戦略の概略、過去の運用実績、運用体制、ファンドマネージャーの運用経験などから総合的にアクティブファンドを判断することになりますが、これだけの情報ではよく分からないのではないでしょうか。例えば、過去に実績が良かったから良いファンドだと考えることはできるかもしれませんが、その良さが今後も続くとは限りませんし、過去の成功が実力なのか偶然なのかも分かりません。
よく分からない金融商品への投資になっていないか
資産運用では、よく分からない金融商品には投資しない、仕組みを理解できない金融商品には投資をしないということが、思わぬ損失を回避するために重要だと考えられます。
アクティブファンドでは、大まかなファンドの運用状況については理解できても、詳細な部分まで運用状況を理解することが難しく、どのような相場局面で利益を確保しやすく、どのような相場局面で損失を出してしまうのか、ファンドマネージャーの特性に左右されてしまう恐れがあります。
アクティブファンドのファンドマネージャーの運用スキルを理解して投資することが、よく分からない金融商品への投資になっていないか、慎重に検討すべき場合があると考えられます。
アクティブファンドを評価する要素について
実際にアクティブファンドに投資を行う場合、どのような観点からアクティブンファンドを評価することができるか検討したいと思います。
投資戦略の概略
アクティブファンドの投資戦略は、アクティブファンドを評価する上で一番参考になる部分だと思われます。しかし、成長株投資なのか割安株投資なのかなど基本的な部分は分かっても、細かい部分は企業秘密的な運用ノウハウとも言えるので、詳細に開示されることは稀と考えられます。
個々の銘柄の選択理由や売買タイミングの選択理由などがよく分からないので、詳細はお任せの形になってしまわざるを得ません。詳細を理解して投資するという状況になるかどうか疑問です。
また、相場環境に適していて高いパフォーマンスを得られる投資戦略は、経験的には毎年のように入れ替わっています。ある年は特定の戦略がピタリと当てはまって高パフォーマンスになったとしても、相場展開が異なる別の年にはパフォーマンスが低くなるということもあります。
確かにどのような相場局面にどのような投資戦略が強いのかということはある程度過去の経験から判断することができますが、将来の相場展開を読んだ上で、投資戦略の優劣を判断することはとても難しく、投資戦略からアクティブファンドを評価するのは簡単なことではないと考えられます。
少なくともこれからの将来の長年にわたって良好なパフォーマンスを上げるアクティブファンドを見つけ出すのは難しいと考えられます。
過去の実績
過去の実績はアクティブファンドのファンドマネージャーの運用スキルの評価に使えそうな気がします。
しかし、運用実績はあくまでも過去のものにすぎず、将来を保障してくれるわけではないため、アクティブファンドを評価する決定的な要因にはなりづらいのではないかと考えられます。
また、相場局面と投資戦略の相性の問題もあります。もし、直近3年間や5年間がパフォーマンスが良かったとしても、それは偶々投資戦略が相場環境に適合していただけであって、相場環境が変わったら急激にパフォーマンスが悪化する可能性もあります。
そのため、よほど長期間にわたって安定した実績を上げていて、それが偶然ではないということに強い説得性がない限り、実績からアクティブファンドを評価するのは難しいと考えられます。
過去の実績が本当に実力であったのか、偶々運が良かっただけなのかは、過去の実績をみても判断できない場合があると考えられます。
運用体制や運用者の経験
アクティブファンドの判断材料として運用体制や運用者の経験などを評価する場合があります。運用体制や運用者の経験は一定程度、アクティブファンドの良し悪しを判断する材料となる可能性がありますが、運用体制や運用者の経験から運用スキルを明確に評価することも難しさがあると考えられます。単に経験がある人で固めたからいいアクティブファンドになる訳ではないと考えられるからです。
運用者の経験
人間の一般的な行動を考えると、確かに何事に関しても経験を積むほど学習効果によって上手くできるようになるため、運用者の運用経験は多少運用スキルに関連があると考えても良さそうです。極端な例ですが、経験がほとんど無いファンドマネージャーと何十年も経験を積んだファンドマネージャーであれば、経験の差がパフォーマンスに影響を与えている可能性がありそうです。
ただし、経験も絶対的なものではありません。一般的に運用者の運用経験が長いほど運用スキルはあると考えられますが、長く投資をしていれば上手になって稼げるようになると言われてもピンとこないのではないでしょうか。上手くいかない場合には、経験が長くても上手くいかないものです。
運用体制
一方、運用体制はミスや不正を防いだり、運用のリスクを抑えたりするという面ではある程度効果があると考えられますが、パフォーマンスにどのように影響があるかは不透明です。不必要なミスをしない、防げる損失を防ぐという意味ではパフォーマンスへの好影響は一定程度あると考えられます。
まとめ
- アクティブファンドは、ファンドマネージャーの運用スキルに投資することを意味します。
- しかし、ファンドマネージャーの運用スキルを評価して、将来良いパフォーマンスを上げるファンドを見つけ出すのは、入手可能な情報からは難しい部分があると考えられます。