主要国の人口ボーナス期と人口オーナス期のデータ
記事作成日:2018年7月27日
国際連合の世界人口推計2017年版を基に、世界の主要国の人口ボーナスの期間と人口オーナスの期間(人口税の期間)のデータを推計しました。人口ボーナス期とは総人口に占める現役世代(15~64歳:生産年齢人口)の比率が高まることで経済的な恩恵を受けられる期間のことを意味します。逆に人口オーナス期とは総人口に占める現役世代の比率が低下することで経済的な負荷がかかりやすい期間のことを意味します。
スポンサーリンク
主要国の人口ボーナス期と人口オーナス期の推計結果
世界の主要な国について、国際連合(United Nations)の「World Population Prospects 2017」から人口ボーナス期及び人口オーナス期について推計した結果は次の通りになります。
国 | 人口(2015年) (億人) | 人口ボーナス期 (年) | 人口オーナス期 (年) |
---|---|---|---|
主要先進国(G7) | |||
日本 | 1.28 | 1950~1990 | 1990~ |
アメリカ | 3.20 | 1960~2010 | 2010~ |
ドイツ | 0.82 | 1970~1985 | 1985~ |
イギリス | 0.65 | 1975~2005 | 2005~ |
フランス | 0.64 | 1970~1985 | 1985~ |
イタリア | 0.60 | 1975~1990 | 1990~ |
カナダ | 0.36 | 1960~2010 | 2010~ |
アジア・オセアニア主要国 | |||
中国 | 13.97 | 1965~2010 | 2010~ |
インド | 13.09 | 1965~2040 | 2040~ |
インドネシア | 2.58 | 1970~2030 | 2030~ |
パキスタン | 1.89 | 1990~2070 | 2070~ |
バングラディシュ | 1.61 | 1975~2030 | 2030~ |
フィリピン | 1.02 | 1965~2055 | 2055~ |
ベトナム | 0.94 | 1970~2015 | 2015~ |
タイ | 0.69 | 1970~2010 | 2010~ |
マレーシア | 0.31 | 1965~2020 | 2020~ |
オーストラリア | 0.24 | 1960~2010 | 2010~ |
欧州主要国 | |||
ロシア | 1.44 | 1960~2010 | 2010~ |
ウクライナ | 0.45 | 1965~2010 | 2010~ |
中東主要国 | |||
イラン | 0.79 | 1990~2035 | 2035~ |
トルコ | 0.78 | 1965~2025 | 2025~ |
イラク | 0.36 | 1980~2090 | 2090~ |
サウジアラビア | 0.32 | 1970~2020 | 2020~ |
アフリカ主要国 | |||
ナイジェリア | 1.81 | 1985~2095 | 2095~ |
エチオピア | 1.00 | 1995~2055 | 2055~ |
エジプト | 0.94 | 1970~2070 | 2070~ |
南アフリカ | 0.55 | 1965~2045 | 2045~ |
中南米主要国 | |||
ブラジル | 2.06 | 1965~2020 | 2020~ |
メキシコ | 1.26 | 1965~2030 | 2030~ |
(備考)データの作成方法は記事後半をご確認ください。5年単位で計算し、人口ボーナス期は生産年齢人口割合が上昇する時期、人口オーナス期は生産年齢人口割合が低下する時期を指します。国によっては計算に含まれない地域等があります(中国の香港・マカオ等)。
(出典)United Nations「World Population Prospects 2017」のデータを基にfromportal.comの担当者が作成
主要先進国(G7)の人口ボーナス期と人口オーナス期
主要先進国は2010年までに人口ボーナス期を既に終えているとみられます。アメリカやカナダは2010年頃まで人口ボーナス期が続き、日本やドイツ、フランス、イタリアは1985~1990年頃までに人口ボーナス期が終わり、人口オーナス期になっています。
人口が増加している場合もありますが、総人口に占める現役世代の比率は低下していくため、社会保障費用負担などが重くのしかかり、今後は人口構成の変化が経済成長の重荷となるとみられます。
アジア・オセアニア主要国の人口ボーナス期と人口オーナス期
アジア主要国では中国やタイが2010年頃に人口ボーナス期が終わったとみられます。一方でインドネシアやバングラディシュは2030年頃、インドは2040年頃、フィリピンは2055年頃、パキスタンは2070年頃まで人口ボーナスが続くとみられ、経済成長の勢いが続く可能性があります。オセアニアのオーストラリアは2010年頃に人口ボーナス期が終わったとみられます。
欧州主要国(G7以外)の人口ボーナス期と人口オーナス期
G7構成国を除く欧州主要国では、ロシアやウクライナの人口ボーナス期は2010年頃に終わっています。欧州地域は全体的に人口の伸びも低迷していて、人口構成の変化が経済成長の重荷になる可能性があります。
中東主要国の人口ボーナス期と人口オーナス期
中東主要国では人口ボーナス期がしばらく続く国があるため、経済が高成長を続ける可能性があります。人口ボーナス期は、サウジアラビアで2020年頃まで、トルコで2025年頃まで、イランで2035年頃まで、イラクで2090年頃まで続くとみられます。人口ボーナス期の期間が長い場合でも人口構成の変化が緩やかな場合、1年当たりの経済への影響はそれほど大きくない場合があります。
アフリカ主要国の人口ボーナス期と人口オーナス期
アフリカの主要国では人口増加が続いていて、現役世代の総人口に対する比率の上昇が続き、人口ボーナス期がしばらく続くとみられます。人口ボーナス期は、南アフリカで2045年頃まで、エチオピアで2055年頃まで、エジプトで2070年頃まで、ナイジェリアで2095年頃まで続くとみられます。
中南米主要国の人口ボーナス期と人口オーナス期
中南米主要国の人口ボーナス期はブラジルで2020年頃まで、メキシコで2030年頃まで続くとみられます。ブラジルは人口増加が続くとしても人口構成の面からは2020年以降は経済成長が鈍る可能性があることに注意が必要です。
人口ボーナス期と人口オーナス期の計算・推計方法
人口ボーナス期と人口オーナス期の計算方法については、国際連合(United Nations)の「World Population Prospects 2017」のデータを用いて計算しています。1950年から2100年までの5年ごとのデータを利用しました。2020年以降のデータは中位推計(MEDIUM VARIANT)を用いて計算しています。
15歳から64歳までの人口を生産年齢人口、14歳以下と65歳までの人口を従属人口として、それぞれ総人口で割ることによって生産年齢人口比率及び従属人口比率を計算しました。
生産年齢人口比率が持続的に上昇する期間を人口ボーナス期、生産年齢人口比率が持続的に低下する期間を人口オーナス期としました。ただし、途中上昇あるいは低下の途中で一時的に低下あるいは上昇が起こる場合、生産年齢人口比率の最低値(ボトム)と最高値(ピーク)の関係を調べ、原則として最低値から最高値までの期間を人口ボーナス期、最高値以降の期間を人口オーナス期としました。
参考:人口ボーナス期とは
人口ボーナス期とは、現役世代(15~64歳)の総人口に対する比率が高まる期間で、労働力の増加、労働者の所得の増加、社会保障費用の負担軽減など(相対的なものを含む)から、経済成長が実現しやすい時期を意味します。つまり、人口構成の変化によって経済的な恩恵が受けられる時期のことを意味します。必ずしも単純に人口が増加していることを意味しません。
参考:人口オーナス期とは
人口オーナス期とは、人口ボーナス期とは逆に現役世代(15~64歳)の総人口に対する比率が低くなる期間で、労働力の相対的な減少、労働者の所得の減少、社会保障費用の負担増加など(相対的なものを含む)から、経済成長がしづらい時期を意味します。必ずしも単純に人口が減少していることを意味しません。
なお、人口オーナスという言葉は日本ではよく用いられますが、海外では人口税という言葉が用いられることがあります。
まとめ
- 日本やアメリカなどの主要な先進国は人口構成の変化が経済に好影響を与える人口ボーナスの時期を既に過ぎており、人口構成の変化が経済に悪影響を与える人口オーナスの時期となっています。
- 新興国では、中国は人口ボーナスの時期を2010年頃に既に終えたとみられる一方、インドは2040年頃まで人口ボーナスの時期が続くとみられます。アジア、中東、アフリカ地域の多くの主要新興国では人口ボーナス期はしばらく続くとみられます。