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中央銀行の独立性とは・中央銀行の独立性のメリットとデメリット

記事作成日:2019年4月30日

中央銀行の独立性とは、中央銀行の運営や金融政策の決定が政府から独立して行われることを意味します。具体的には政府と中央銀行の組織が切り離される、中央銀行の人事に政府が一定以上の関与ができないようにする、金融政策決定に対する政府の関与を制限するといったことによって実現されます。

中央銀行が独立性を確保することによって、政治的な配慮に左右されずに金融政策運営を行うことができるようになり、物価の安定や長期的な経済成長につながると考えられています。

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日本における中央銀行の独立性(日本銀行の独立性)

中央銀行は公的な機関なので全く政府の関与がないという訳にも行きません。日本では中央銀行のトップ(総裁)は、国会の同意を得て内閣が任命しますが、任命した後は原則として解任できないようになっています。また、日本銀行の金融政策を決定する金融政策決定会合では政府関係者が参加していますが議決権はなく、政府の関与が制限されています。

中央銀行の独立性が必要な理由(メリット)

中央銀行の独立性が確保されていないと、政府の意向に沿って金融政策運営が行われることになります。政府が経済的に合理的と考えられる金融政策運営を常に行えれば問題がないのですが、実際には政治的な背景によって金融政策がゆがめられることがあります。

例えば、選挙が違い場合には景気を良くして選挙に勝ちたいという誘惑にい駆られるため、金融引き締めではなく金融緩和を積極的に行うことがあります。また、世論の支持を失わないために、景気が過熱してバブルが発生している時でも、金融引き締めによる景気後退を警戒して引き締めを先送りするということも考えられます。

中央銀行の金融政策が政治的な配慮によって左右されることがないように中央銀行の独立性が確保されるようになったのです。

過度なインフレの発生を防ぐため

中央銀行の独立性が必要な理由として最も重要な理由が行き過ぎたインフレを防ぐということにあります。行き過ぎたインフレが発生すると同じ金額で買えるものが少なくなり、実質的な購買力が低下するため通常は国民生活にマイナスの影響を及ぼします。

また、行き過ぎたインフレが発生すると、通貨の価値が薄まることによって現金を沢山持ってる人の資産価値が薄まる一方、借金を負っている人の負担が軽くなるという富の移転が発生しますが、過度なインフレを防ぐことで理由のない富の移転を防ぐことができます。

中央銀行が政府からの独立性を確保し、景気とインフレに配慮した適切な金融政策を行うことで過度なインフレを防ぐことができます。

バブルの発生の防止

インフレの発生と類似しますが、中央銀行の独立性が必要な理由としてバブルが発生することを防止するということが挙げられます。バブルとは不動産や株価などの資産価格が実態で妥当だと考えられる水準を大きく超えて短期間で過剰に値上がりすることを意味しますが、バブルが発生すると資産価格が上がらなくなってから急激な逆の動きが発生し経済にダメージを与えることがあります。

例えば、土地の価格がバブルで上昇しすぎてしまうと、値上がりしすぎて価格が上がらなくなってしまうと、価格下落への不安から投資家が一斉に資産を処分しようとして価格が暴落してしまうことがあります。

中央銀行が独立性を確保し、バブルが発生する前に早めに金融引き締めなどの対策を講じることでバブルの発生とその後の経済の落ち込みを回避することができます。

政府の財政規律を守るため

中央銀行の独立性が阻害されてしまうと政府の財政規律が失われてしまうことがあります。政府は国債を発行し、国債を中央銀行に引き受けさせる一方で、中央銀行に紙幣を発行させることによって、財政赤字を補いいくらでも財政出動をすることができてしまいます。いわゆる財政ファイナンスと呼ばれる状態ですが、いくらでも財政出動ができてしまうことによって政府の財政規律が失われてしまい、非効率で無駄な投資が行われてしまう可能性が高まります。また財政ファイナンスによって、中央銀行に紙幣を発行させる状態はいつまでも維持できないと考えられており、上手くいかなかった時に経済や金融が大きく混乱する可能性があります。

中央銀行が政府からの独立性を保つことで、財政ファイナンスを防ぎ、政府の財政規律を維持することができるのです。

長期的な経済の安定成長を図るため

中央銀行の独立性が確保されていない場合、政府は選挙に勝ちたいという政治的な動機から、常に景気を押し上げる金融緩和を続けるよう中央銀行に要請する場合があります。一見、景気が良い時にわざわざ金融引き締めをして景気を冷やさなくても良いのではないかと考えるかもしれませんが、インフレやバブルの発生を防ぐ必要がありますし、景気が過熱し過ぎると非効率で無駄な投資が増え、企業の倒産が減るため経済の新陳代謝が鈍る恐れがあります。

金融引き締めによって景気の過熱を適度に防がないと、経済的に非効率なものや無駄なものが蓄積してしまうことや新たなイノベーション・技術革新を阻害してしまって生産性を押し下げてしまうことがあります。また、景気が過熱し過ぎると景気の落ち込みも深刻なものとなりやすくなります(景気の振幅が増大する)。

中央銀行は景気の行き過ぎを防ぐために、独立性を確保して、長期的な経済の安定的な成長を図っているのです。

中央銀行の信認を維持し通貨価値を守るため

中央銀行が政府の介入を許してしまうと、中央銀行の金融政策運営などに対する信認を失ってしまう場合があります。中央銀行の金融政策運営に対する信認が失われてしまうと、海外投資家は投資した資金を引き揚げてしまう可能性があります。

中央銀行が金融緩和を行うと、金利の低下につながるため、その国の通貨の魅力は低下し、通貨価値が下落する恐れが出てきます。中央銀行の独立性が確保されていないと、金融緩和を行う可能性が高まるため、通貨価値が下落しやすくなります。通貨価値が下落する恐れが強いと海外投資家が一斉に投資資金を引き揚げてしまい、株価下落、金利上昇(債券価格下落)、通貨下落(通貨安)のトリプル安となってしまうことがあります。

中央銀行が政府からの介入を防ぎ、独立性を確保することで通貨価値が守られる側面があるのです。

中央銀行の独立性による問題点(デメリット・リスク)

中央銀行が独立性を確保することにはたくさんのメリットがありますが、一方で問題点(デメリット・リスク)もあると考えられています。中央銀行は物価の安定をより重視するようになるため、経済や雇用への配慮を欠くようになるということです。

特に近年では先進国を中心に低インフレの状態が続いており、ハイパーインフレの発生を警戒する必要が本当にあるのか、インフレよりもデフレに警戒が必要なのではないかという議論もあります。

過剰に景気を抑制する恐れがある

中央銀行は独立性を確保して物価の安定を図ろうとするあまり、過剰に景気を抑制してしまう恐れがあると考えられています。行き過ぎたインフレやバブルの発生を防ぐために、早く金融引き締めをしてしまった結果、景気を必要以上に抑制してしまうことがあるとされているのです。

中央銀行は金融緩和を行った後は、次の金融緩和に備えて政策手段を動員する余地を確保するため急いで政策金利を元に戻そうとすることがあります。

例えば、金融緩和でゼロ金利政策を実施していた後に、景気が持ち直してきたとすると、政策金利を戻さなければ再び景気が後退した時にゼロ金利から金融緩和を行わなければいけなくなりますが、金融引き締めで政策金利を1%や2%に戻すことができれば1%や2%の政策金利引き下げ余地ができることになります。

デフレに陥りやすくなってしまう

先進国では経済が成熟し、経済における需要が伸びづらくなっていることから、供給過剰が発生しやすくなっており、デフレになりやすくなっていると考えられています。

一方で中央銀行の使命としてインフレ発生の防止が与えられていることから、中央銀行は物価を抑え込もうとします。その結果、インフレは防がれても物価が下落したり(デフレーション、デフレ)、物価がほとんど伸びなくなったりすることがあります。

デフレによって持続的な物価下落が起きると債務の負担が増大するなどの問題が発生しますし、インフレが発生しなくなると企業の売上が伸びずコストを吸収しきれなくなる、賃金が上がらなくなるなどの問題が発生します。

クラウディングアウトを防ぐことができなくなる

中央銀行が政府からの独立性を高め、政府の動きとは関係なく金融政策を行うと、政府が財政出動のために国債を大量に発行した時に市場の金利が上昇し、資金需要が抑制されるクラウディングアウトを防ぐことができなくなる可能性があります。

政府が景気刺激をしようとして財政出動を行っても、中央銀行が政府の動きを支援するような形で金融政策を行わなければ政府の動きが無駄になってしまう恐れがあるのです。

まとめ

  • 中央銀行の独立性とは、中央銀行が政府から独立して金融政策運営を行える状態が確保されていることを意味します。
  • 中央銀行が独立性を確保するメリットは、インフレやバブルの防止、長期的な経済成長の達成、政府の財政規律の維持、通貨価値の保全などがあります。一方で、中央銀行が独立性を確保することによって景気を過剰に抑制してしまうなどのデメリット・リスクが生じることがあります。

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【中央銀行の独立性とは・中央銀行の独立性のメリットとデメリットの記事は終わりです】

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