傷害保険の基礎知識と検討のポイント
記事作成日:2015年9月29日
最終更新日:2017年5月1日
傷害保険とは、急激かつ偶然な外来の事故によりケガをした場合に保険金が支払われる保険です。傷害保険のポイントは、後遺障害保険金をどのように設定するか、地震や津波などが補償対象となるかどうか、家族まで補償範囲を広げるかどうかです。医療保険に加入しない場合や個人賠償責任保険に加入したい場合などに加入を検討する可能性があります。
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傷害保険で支払われる保険金
傷害保険で支払われる保険金は、死亡保険金、後遺障害保険金、入院保険金、通院保険金、手術保険金の5つが基本となります。そして、保険によっては介護保険金、入退院時の一時金などが支払われる場合あります。
死亡保険金 | ケガが原因で死亡した場合に支払われます。 |
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後遺障害保険金 | ケガが原因で障害が残った場合に支払われます。死亡保険金の金額が基準となって、障害の程度によって保険金が変化します。死亡保険金に対して4%~100%といった設定例が多いですが、保険会社によって若干異なります。 |
入院保険金 | ケガが原因で入院することになった場合、入院日数に応じて保険金が支払われます。 |
通院保険金 | ケガが原因で通院することになった場合、通院日数に応じて保険金が支払われます。通院には通常往診が含まれます。 |
手術保険金 | ケガが原因で手術することになった場合、入院保険金の日額の5倍や10倍などの保険金が支払われます。入院中の手術は倍率が高く、入院をしないで受けた手術は倍率が低くなる傾向があります。 |
その他、介護が必要になった時に介護保険金、一定の入院時や退院時に一時金を支払う保険もあります。また、個人賠償責任特約、携行品特約、受託物賠償責任特約、救援者費用特約などがつけられる保険もあります。
傷害保険の特徴
病気は補償対象外
傷害保険はケガに対する補償はありますが、病気は対象外となっています。
職業によって保険料が違う場合も
傷害保険は、職業によってケガをする危険が違うことから、職業によって保険料の料率を変えている場合があります。危険が少ない職業は保険料が安くなり、危険が多い職業は保険料が高くなります。
基本的に定額払い
傷害保険は基本的に定額払いです。あらかじめ決められた保険金が支払われるため、実際の治療費に関係なく保険金が支払われます。そのため、結果的に治療費などよりも保険金が多かった場合もあれば、治療費よりも保険金が少なくなる場合もあります。
180日以内の死亡や後遺障害、入院、通院が基本
傷害保険では事故発生の日から180日以内に死亡した場合、後遺障害が生じた場合、入院や通院をした場合に保険金が支払われるように定められていることが多いです。ただし、保険会社によって若干異なり、補償対象を長期間としている場合もあります。
通院保険金は日数や保険金が少ない
通院保険金は30日まで、90日までといったように支払い対象となる通院日数に制限がかかっているのが基本です。また、1日当たりの保険金も入院保険金よりも通常少なくなっています。
地震や噴火、津波は基本的に対象外
傷害保険では保険金を支払わない場合として地震や噴火、津波によるケガを挙げています。そのため、通常の傷害保険では地震や噴火、津波によるケガに備えることはできません。ただし、天災危険補償特約といったような名称で、地震や噴火、津波も補償対象とすることができる特約があります。
放射線によるケガは対象外
傷害保険では核燃料物質等の放射線によるケガ、放射能汚染が原因のケガは補償対象外としています。地震や噴火、津波と違って、放射線によるケガを補償する特約は用意されていないようです。
ウイルスや細菌による食中毒は対象外
ウイルスや細菌による食中毒は傷害保険の急激、偶然、外来の事故に該当しそうな気もしますが、傷害保険では補償の対象から除かれています。ただし、一定の感染症を補償対象とすることができる特約もあります。
有毒ガスや有害物質の急性中毒は補償対象
有毒ガスや有害物質による急性中毒は傷害保険の急激、偶然、外来の事故に該当していて、補償対象となっています。
危険なスポーツや職業での事故は対象外
危険なスポーツをしている時の事故によるケガや、危険な職業に従事している間の事故によるケガが補償対象外となっています。ただし、危険なスポーツは特約によって補償対象とすることができる場合があります。
補償を交通事故に限定した交通傷害保険も
傷害保険には普通傷害保険と呼ばれるケガ全般を補償対象としたもの以外に、交通事故に補償対象を限定した交通傷害保険があります。交通傷害保険は交通事故によるケガに補償対象を限定しているため、保険料が抑えられています。
家族も同時に加入できる
傷害保険は個人単位で加入することもできますが、家族まで補償対象を広げることができます。家族傷害保険といったように呼ばれている場合もあります。直接の被保険者と比べると、保険金などの補償内容は基本的に抑えられています。
傷害保険はどんな場合に加入するのか
医療保険に加入できない場合
持病があったり、過去に大きな病気をしていたりして医療保険の加入審査で拒絶されてしまい、医療保険に加入できない場合があります。傷害保険は持病や過去の病歴を問わず加入することができるため、病気に備えることはできなくても、傷害保険を使ってケガに備えるということが考えられます。
自動車を持っていない場合
自動車を保有していると自動車保険に加入することがほとんどだと思います。そして自動車保険で人身傷害保険を付けて、自動車事故などによるケガに備えることになる場合が多いです。自動車保険の人身傷害保険ではケガ全般に備えることはできませんが、交通事故への備えができます。
しかし、自動車を持っていない場合は自動車保険の人身傷害保険に加入することは通常ありませんので、ケガ全般に対して傷害保険で備えるということが考えられます。
個人賠償責任保険に入る場合
他人への損害賠償責任を負った時に保険金が支払われる個人賠償責任に加入したい場合も傷害保険を活用することが考えられます。現在、個人賠償責任保険単独で契約することは困難で、自動車保険や火災保険、傷害保険に特約の形で付帯して加入することが一般的となっています。
自動車保険や火災保険で個人賠償責任保険に加入しない場合に傷害保険を活用することが考えられます。自動車を保有しておらず、賃貸暮らしで保険をかけるような家財がほとんどない場合に、傷害保険を利用するといったことが考えられます。
傷害保険に加入する時のポイントは
傷害保険に加入する時のポイントは後遺障害で介護が必要になった時への備えやけがによる収入減少への備えです。特に傷害保険で備えるなら後遺障害や介護になります。傷害保険の仕組み上、収入減少に備えるのは難しいです。そのため、後遺障害保険金や介護保険金を重視するべきと考えられます。
また、補償の範囲では、地震や津波、噴火などを補償対象にするかどうか、家族まで補償を広げるかという点が重要です。
入院や通院、手術の保険金の重要性は低い
ケガが原因で入院や通院が必要になった場合でも、軽度のケガであれば貯金などで十分対応でき、重度のケガの場合でも治療費は、公的医療保険制度の高額療養費があるため、膨らんでも限度があるからです。
入院保険金や通院保険金、手術保険金は支払われる保険金がそれほど多くならないということも考慮する必要があります。また、医療保険に加入している場合、保障内容が重複します。
死亡保険金は別の生命保険でも準備できる
死亡保険金は遺族の生活保障という意味合いが強いですが、ケガに限定して備える意味が薄いため他に定期保険や収入保障保険などの生命保険で備えるのが合理的と考えられます。
後遺障害保険金や介護保険金を重視
傷害保険によっては、死亡保険金と後遺障害保険金だけの補償内容となっている場合があり、傷害保険の保険料を抑えたい場合には適しています。また、介護保険金を支払う保険の場合は状況次第では検討の価値があるかもしれません。
なお、死亡保険金と後遺障害保険金は切り離すことが困難であるため、死亡保険金と後遺障害保険金はセットの契約となり、死亡保険金部分はどうしても他の生命保険と重複する可能性が高くなります。
まとめ
- 傷害保険は、急激かつ偶然な外来の事故でケガをして、死亡したり、後遺障害を負ったり、入院や通院をしたり、手術をしたりした場合に保険金が支払われます。保険によっては介護が必要な状態になった場合に保険金が支払われることがあります。
- 傷害保険のポイントは、後遺障害保険金をどのように設定するか、地震や津波などが補償対象となるかどうか、家族まで補償範囲を広げるかどうかです。