傷害保険の必要性について考える
記事作成日:2015年9月23日
ケガの補償をする傷害保険の必要性について検討しています。多くの傷害保険では後遺障害などに対する保険金には限界があります。自動車保険の人身傷害保険の補償対象の拡大や保険金額の引き上げ、所得補償保険への加入などの方が効果が高いと考えられ、更に心配な場合に傷害保険を検討することになります。
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傷害保険とは
傷害保険はケガの補償をする保険です。死亡や後遺障害が残った場合やけがによる入院や通院、手術などに対して保険金が支払われます。多くの場合は最大で1,000万円程度の補償となっているようです。補償の対象を交通事故だけに限定した交通傷害保険や、補償対象となる人を夫婦や家族まで拡大する家族傷害保険などもあります。
傷害(ケガ)で困る場面
ケガで困る場面は、ケガをして働けなくなり収入が途絶えてしまうというような場合や、ケガをして高度障害の状態になってしまい介護が必要になってしまうような場合です。数百万円というレベルではなく、収入の喪失や障害による介護は数千万円というレベルでお金が必要になる場合があります。
相手がある事故で損害賠償金が受け取れる場合はまだ良いですが、相手がある事故で自分側の過失が重く損害賠償金が受け取れないか少ない場合、相手がない事故でケガをした場合には、自分側の保険の有無が重要になることがあります。
傷害保険と保障(補償)範囲が重なる保険
傷害保険と保障(補償)の範囲が重なる民間保険や公的保険は数多くあります。
傷害保険と保険範囲が重なる民間保険など
- 民間医療保険
- 自動車保険
- 所得補償保険
- 民間介護保険
- 勤務先企業の補償
傷害保険と保険範囲が重なる公的保険
- 労働者災害補償保険
- 公的医療保険
- 傷病手当金
- 障害年金
- 公的介護保険
深刻な事態では医療保険では足りない
通常医療保険では、病気だけでなくケガでの入院や手術なども保障の対象となっています。そのため、ケガに備えて医療保険に加入しておけば安心を思う人も多いと思います。
しかし、通常の医療保険では、入院給付金や手術給付金が支給の中心となりますが、1入院あたりで給付日数の制限があるものがほとんどで、数十万円前後の給付になります。入院給付金が高額に設定されていれば百万円を超える場合もありますが、限界があります。
しかし、百万円程度では、ケガによる収入の喪失や高度障害での介護にとても耐えることはできません。
自動車保険の人身傷害保険は優れもの
傷害保険と補償範囲が重なり、民間保険で重要なものが自動車保険です。自動車保険には自分側のケガの補償として人身傷害保険があります。人身傷害保険の補償対象となる事故は大きく分けると【自動車対自動車のみ】、【片方に自動車が絡む事故】、【自転車対歩行中などの交通事故】の3パターンありますが、自動車対自動車に限らず交通事故まで広く補償するタイプの場合、かなりの傷害事故をカバーすることができます。
そして重要なのが人身傷害保険は補償額が高額に設定で、遺失利益や介護費用なども補償対象となる場合があることです。傷害保険ではカバーしきれない部分を補償することができるため、自動車保険の人身傷害保険は非常に重要なケガへの備えとなります。ただし、ケガ全般が補償されるわけではなく、交通事故が中心となります。保険によっては自動車同士の事故に限られます。
収入の喪失には所得補償保険が役立つ
病気やケガで働くことが出来なくなり収入を喪失してしまった場合には、所得補償保険がある程度役に立ちます。所得補償保険はちょうどよい補償内容のものが少ないですが、団体保険などでは有利な条件の保険に加入できることがあります。
補償される年数には限度はありますが、長期の補償という意味では医療保険よりも効果的な場合があります。ケガ以外の場面でも役に立つことがあるため、状況によっては役に立つ保険です。
民間介護保険はこれから
ケガによって介護が必要となった場合の備えとして民間介護保険も一部保障範囲が重なります。しかし、民間介護保険はまだまだ商品性の改善が図られている段階にあり、商品の選択が難しいということがあります。また、一時金が数百万円程度支払われるものもありますが、民間介護保険だけで収入の喪失や高度障害の介護をカバーするというのは現実的ではありません。
企業独自の保障がある場合も
大企業の場合は労働災害によるケガ以外の場合でもケガの場合に何らかの保障制度を設けている場合があります。その場合には、その企業で働き続ける限り傷害保険の必要性は大きく低下します。
一番頼りになるのは公的社会保障制度
ケガで収入を喪失したり、高度障害の状態になったりした場合に、一番頼れるのが公的社会保障制度です。労働中の事故によるケガであれば労働者災害補償保険でカバーできます。また、ケガ一般について公的医療保険、つまり健康保険制度があり、高額療養費制度によって医療費が無制限に膨らむことを防ぐことができます。
会社員の人がケガで働けなくなり会社を長期間休むことになったら傷病手当金の支給があり、障害状態になってしまった場合には国民年金や厚生年金などから障害年金が支給されます。年金の場合は保険料を滞納している場合、支給対象とならない場合があるため注意が必要です。
65歳以上の高齢者のケガの場合は公的介護保険でカバーできる場合もあります。公的介護保険は65歳以上であれば介護状態となった理由は問われませんが、40歳から64歳の場合は特定の病気によって介護状態になった場合でないと保険の対象とならないので注意が必要です。
傷害保険は必要か?
ケガに対する保険はあった方が良いのですが、通常の傷害保険では保険金が限られているため、本当に困る収入の喪失や高度障害の介護には十分備えることは難しいです。あっても良いのですが、本当の安心につながるかは難しい面があります。
そのため、ケガへの備えは公的な社会保障制度を基本にしながら、自動車保険の人身傷害保険やケガに限らず補償対象となる所得補償保険を充実させることが先で、更に余裕があれば傷害保険で部分的にケガに備えるという形になります。
自動車保険の人身傷害保険ではケガ全般が保障されるわけではないため、補償対象に穴が出来てしまい運任せの側面が残ってしまいますが、リスクが高いと考えられる自動車事故など交通事故を優先という考えは一定の合理性があります。
交通事故以外のケガが心配な場合、収入の喪失や高度障害での介護への備えを念頭に置きながら、後遺障害への補償が厚い傷害保険や、一時金が高額な民間介護保険を検討することになります。ただし、保険料に見合ったものかどうかはかなり難しい判断になります。軽度なケガに対しては傷害保険に加入してまで備えるようなものではありません。公的な社会保障制度や貯金で十分対応できます。
まとめ
- ケガをした時に、働けなくなって収入を失ってしまう場合や高度な障害状態になり介護が必要となってしまう場合はたくさんお金が必要になります。
- 多くの傷害保険では後遺障害などに対する保険金には限界があります。自動車保険の人身傷害保険の補償対象の拡大や保険金額の引き上げ、所得補償保険への加入などの方が効果が高いと考えられ、更に心配な場合に傷害保険を検討することになります。
- ただし、公的社会保障制度を基本に考えていく必要があり、その上で民間保険を検討することが重要です。