医療保険の手術給付金とは
記事作成日:2015年6月25日
最終更新日:2018年8月9日
医療保険の基本的な保障内容に一定の手術を行った場合に支払われる手術給付金が含まれています。手術給付金の注意点は、対象となる手術の範囲、手術給付金の金額です。ただし、手術給付金の金額はそれほど高額にならないため、貯金が少ない場合には役に立ちますが、貯金があればこだわる必要性が薄れます。
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手術給付金とは
医療保険の手術給付金とは、一定の手術を行った場合に支払われる給付金です。医療保険の基本的な保障内容になります。
手術給付金の対象となる手術
手術保険金の支払い対象となる手術には大きく分けると「約款で決められた88分類の手術」と「公的医療保険の対象となる手術」の2種類があります。しかし、最近では公的健康保険が適用される手術を支払い対象とする医療保険が中心となりました。
約款で決められた88分類の手術とは
昔の医療保険では約款に定められた88分類の手術が支払い対象となっていました。88分類とはいっても大きな分類ですので支払い対象となる手術は約600種類となります。
公的医療保険が適用される手術の種類は約1,000種類です。約600種類と約1,000種類では400種類も違うので大きな違いに感じられますが、よくある基本的な手術は88分類の手術に含まれているため、数字ほどは大きな差にはなっていません。
公的医療保険の対象となる手術とは
公的医療保険の対象となる手術は各社とも基本的に医科診療報酬点数表で手術料が算定される手術です。公的医療保険が適用される手術の種類は約1,000種類で88分類の手術よりは支払い対象が拡大されています。
手術を受けた時点の医科診療報酬点数表が基準になるので、改定があった場合は保障対象が変化します。公的医療保険の対象となる手術でも手術給付金の対象とならないものが一部あります。
88分類(約600種類)から拡大して対象となるのはものもらいや中耳炎などがあります。一方で、放射線照射は放射線治療料の算定対象となり、手術料に該当しなくなる場合があるため、別途放射線治療給付金を設けている場合があります。一部の保険会社は放射線治療を手術に含めている場合もあります。
手術給付金の金額
手術給付金の金額は、大きく分けると2つのタイプがあります。基本となる入院給付金に対して5倍、10倍、20倍、40倍といったような倍率で定められているものと、一律10万円、一律20万円というように定額となっているものがあります。
倍率で決まっている手術給付金は重度なものほど倍率が高く、軽度なものほど倍率が低くなります。入院を伴う手術と入院を伴わない手術(外来手術)で倍率に差をつけているものもあります。
手術給付金の対象とならない手術の例
手術給付金の支払い対象とならない場合の例は次のようなものがあります。ただし、保険会社によっては支払われたり支払われなかったりするので、詳細は保険会社に確認してください。
「手術料の算定対象でも対象外の場合」、手術のように見えても「医科診療報酬点数表で手術料が算定されない場合」、「回数等に制限がある場合」があります。
手術料の算定対象でも対象外の場合
医科診療報酬点数表で手術料が算定されても手術給付金の支払い対象となっていない場合があります。件数が多いとみられるもので軽微なものが除外されているようです。保険会社や保険商品によって扱いが異なる場合があるためご注意ください。
軽微な手術
軽微な手術は支払い対象とならない場合があります。傷口に対して切除、結紮又は縫合などを行う創傷処理、膿などを切除する皮膚切開術、壊死した組織などを切って取り除くデブリードマンなどは手術給付金の対象としていないことが多いです。
中耳炎で鼓室内に貯まった液を出すために鼓膜に穴をあける鼓膜切開術は対象となったりならなかったりするようです。魚の目、タコ手術も対象外とされている場合があります。
血が出ない柔道整復術
血が出ない柔道整復術は支払い対象となら異ない場合があります。骨折や関節脱臼などにをメスなどで切ることなく、手で元に戻す非観血的整復術、手で固定した状態にする非観血的整復固定術、手で元に動くようにする非観血的授動術などは基本的に手術給付金の対象となりません。
非観血的とは血が見られないということですが、切らないで手で戻すので血が出ないのは当然と言えば当然です。接骨院や整骨院などで柔道整復術を受けた場合が該当します。
抜歯の手術
抜歯手術は基本的に手術給付金の対象となっていません。
医科で手術料が算定されない場合
医科診療報酬点数表で手術料が算定される場合に手術給付金が給付されるという内容の保険は医科で手数料が算定されない場合には、手術給付金が支払われない場合があります。手術給付金の支払い対象が、医科診療報酬点数表の手術以外で定められている場合は、以下の手術でも支払い対象となる場合があります。
検査のみが目的の手術
例えば臓器穿刺(ぞうきせんし)は大きな切開をしないで検査したい臓器を調べる方法で手術のように思えますが検査料が算定されるため、医科で手術料が算定されることが条件となっている場合は手術給付金の対象外です。
輸血・幹細胞移植
医科診療報酬点数表で手術料ではなく輸血料が算定されるため、医科で手術料が算定されることが条件となっている場合は対象外となります。ただし、幹細胞移植は輸血料が算定されますが、一部の医療保険では手術給付金の対象に含めている場合もあります。含まれない場合もあります。また、白血病治療のため、骨髄・末梢血幹細胞の提供を行うドナー側の幹細胞採取術に対して手術給付金を支給する場合もあります。
手術料ではなく処置料が算定されるもの
胸腔にチューブを入れて時間をかけて吸引を行い排液や排気を行う「持続的胸腔ドレナージ」は手術のように思えますが処置なので手術料ではなく、処置料が算定されます。腹腔で同様の処置を行う「持続的腹腔ドレナージ」や「エタノールの局所注入」も処置料が算定されます。そのため、医科で手術料が算定されることが条件となっている場合は手術給付金が支払われない場合があります。
歯科診療報酬点数表のみ手術料となる場合
手術のように思えても歯科診療報酬点数表でのみ手術料が算定されていて、医科診療報酬点数表で手術料が算定されていないものは、医科で手術料が算定されることが条件となっている場合は支払い対象とはなっていません。そのため、医科での手術料算定が支払い条件となっている場合、基本的に歯科の手術は対象外と考えておきましょう。ただし、医科診療報酬点数表で手術料が算定されているものは支払い対象となる場合があります。
具体的には、歯根端切除術や歯根嚢胞摘出手術などが該当します。ただし、歯根端切除術や歯根嚢胞摘出手術は一律手術給付金の支払い対象となっていないという訳ではなく、医科での手術料算定以外の条件が手術給付金の支払い条件となっている場合、支払い対象となる場合もあります。約款でどのような手術を支払い対象としているかによるため注意が必要です。保険会社や保険商品によって扱いが異なります。
レーシック手術(レーザー屈折矯正手術)
レーシック手術は医科診療報酬点数表で手術料が算定されないため、医科で手術料が算定されることが条件となっている場合は基本的に手術給付金の支払い対象となりません。ただし異なった扱いをしている保険もあります。
美容整形の手術
治療目的ではなく美容を目的とする整形手術は公的医療保険(健康保険)が使えません。公的医療保険において医科で手術料が算定されることが条件となっている場合は、手術給付金の支払い対象とはなりません。
正常な妊娠・出産
正常な妊娠・出産は公的医療保険が使えず、公的医療保険において医科で手術料が算定されることが条件となっている場合は手術給付金の支払い対象とはなりません。
先進医療
先進医療は公的医療保険が適用されず、費用は自己負担となります。そのため、原則として手術給付金の対象となっていません。ただし、先進医療保険(先進医療特約)で保険金の支払い対象となる場合があります。
回数等に制限がある場合
一連の治療過程で手術料が1回のみ算定されるもの
同じ手術を何回か受けた場合でも、医科診療報酬点数表で一連の治療過程で連続して受けた場合手術料が1回のみ算定される手術とされている場合、一定期間内に受けた最も高い1回の手術に対して手術給付金が支払われ、他の手術は給付金の対象とならない場合があります。
手術料が1日につき算定されるもの
人工心肺や補助人工心臓などの場合で数日間にわたって行われるものでも、医科診療報酬点数表において手術料が1日につき算定されるものは最初の1日目だけが手術給付金の支払い対象となります。
手術給付金に対する考え方
軽微な手術は経済的な負担がもともと大きくないと考えられるので、特に手術給付金は必要ないと考えられます。一方で、重大な手術ほど手術給付金があった方が助かると考えられます。しかし、入院日額が10,000円とすると40倍でも40万円なので、十分に貯金を貯めていれば敢えて手術給付金を手厚くする必要はないと考えられます。
医療保険に加入する場合には基本的に手術給付金もついてくることになりますが、手術給付金の充実度合いは医療保険を選ぶ決定的な要因にはならないと考えられます。
まとめ
- 手術給付金には88分類の手術を対象とするものと公的医療保険の適用手術を対象とするものがあって、種類が多い公的医療保険の適用手術を対象とするものが主流となっています。
- 手術給付金の保険金額は、入院給付金の5倍や10倍など倍率で決まるものと、一律いくらとする定額のものがあります。
- 手術給付金は十分に貯金があれば必要性は高くありません。