竜巻など突風による災害の防災
記事作成日:2015年11月4日
最終更新日:2016年9月14日
テレビ番組などでアメリカでの竜巻(トルネード)の様子を見たことがある人も多いと思います。家などの建物が簡単に吹き飛ばされてしまい、車さえも風で宙を舞ってしまいまうことがあります。しかし、日本で発生する竜巻はアメリカで発生する竜巻よりは威力が弱いことが知られています。それでも、日本で竜巻により人的・物的な被害が出ることがしばしばあります。
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竜巻の防災のポイント
竜巻の防災は事前に出来ることは安全な建物に住むようにする、普段から情報収集をするということです。どちらかというと実際に発生した時の対応が重要で、安全な場所に移動して飛来物から身を守るということが重要です。
竜巻とは
竜巻とは、積乱雲などの下に発達する細長い渦巻き状の強い上昇気流のことをいいます。台風とは違って寿命が短いですが、突風を引き起こすため強力な竜巻の場合は大きな被害をもたらします。
日本の竜巻の傾向
9月前後が多いが1年中発生
日本での竜巻は台風が多い9月前後に発生が多くなることが知られています。大気の状態が不安定になりやすいことが影響していると思われます。しかし、9月前後に限らず日本では1年中竜巻が発生しています。いつでも発生する可能性があるので気を付けましょう。
竜巻は全国の沿岸部や平野部が中心
地域的には北は北海道から南は沖縄まで全国で竜巻が発生していますが、特に沿岸部や平野部での発生が多くなっています。
竜巻以外の突風は内陸部でも発生
ただし、竜巻以外にも積乱雲からの下降気流によって強い風が吹くダウンバーストや積乱雲からの冷たい空気が広がり暖かい空気とぶつかった時に突風が発生するガストフロントなどは内陸部でも発生しています。
竜巻の予兆
突発的に発生するため、大雨などと比べると予測が難しいとされていますが予兆はあります。竜巻の予兆を感じた場合には、すぐに安全な場所に避難しましょう。
急に暗くなる
通り雨や雷の時にも急に暗くなりますが、空が急に暗くなることは竜巻発生の予兆の1つです。竜巻が発生する時は巨大な積乱雲が発達しているため、空を覆い太陽の光を遮ります。
急な大雨が降る、雷や雹(ひょう)が発生する
竜巻は積乱雲が発達している場合に発生する可能性が高いため、積乱雲によってもたらされる急な大雨、雷や雹(ひょう)は竜巻の予兆の1つです。雷や雹はそれ自体が危険なので野外にいたらすぐに避難しましょう。
冷たい風を感じる
竜巻の中心部では強い上昇気流が発生していますが、竜巻の周辺部では下降気流が発生することが知られています。上空の冷たい空気の影響を受けた風が吹き付けることになるため、冷たい風は竜巻の予兆の1つです。
土煙や飛来物が多い
竜巻の周辺では土が舞い上がり土煙が発生したり、木の枝や葉っぱなどの飛来物が多くなります。飛んでいるものが多い、普段とは違うような感じがしたら竜巻の予兆である可能性があります。
円柱や漏斗状の雲が見える
既に竜巻が発生する直前とも言えますが、縦に長い円柱状の雲や漏斗状の雲のようなものが見えた場合は、竜巻が発生しつつある可能性が高いです。すぐに安全な場所に避難しましょう。
耳鳴りがする
竜巻の中心部では強い上昇気流が発生していて、とても気圧が低い状態になっています。竜巻の周辺では気圧が急激に変化しているので、気圧の変化を感じて耳鳴りがすることがあります。
轟音(ごう音)がする
竜巻が発生する中心部では強い上昇気流が発生しますが、周辺部では気流が渦上に流れるため、ゴーッという轟音が聞こえることがあります。
竜巻の被害
竜巻は急に発生して比較的短時間で収まることが知られています。また竜巻の影響を受ける地域は狭いため、竜巻の移動方向に沿って細長い地域に被害が出ることになります。
竜巻による強風のため、耐久度が低い建物や塀などの構築物、看板、車などの一部あるいは全部が飛ばされ、飛ばされたものが更に別の建物や構築物などに当たって、更に破片などが吹き飛ばされます。
竜巻による被害は物が飛ばされることや飛ばされたものと衝突することによってもたらされます。
竜巻の移動速度
竜巻は移動速度が時速で30~40キロ程度のものが多いとされていますが、時速100キロ前後の高速で移動するものがあります。時速30~40キロは一般道を走る自動車のゆっくりした速度ですが、走ったり自転車に乗ったりしても追いつかれてしまいます。案外速く移動しますので、まだ遠くに見えると思っていても、急に接近してくることがあります。
竜巻は複数発生することもある
竜巻が発生しやすい気象条件が揃うと、竜巻が1つだけではなく複数発生することもあります。特に中心となる竜巻の周辺部で規模が小さい竜巻が発生することもあるため油断は禁物です。
竜巻の強さ
竜巻の強さについては、(改良)藤田スケールやTORROスケールが有名です。米国では改良藤田スケールが用いられていて、EF0~EF5の6段階で表され、数字が大きくなるほど被害が大きくなります。日本では気象庁が日本版改良藤田スケール(JEF)を策定し竜巻の強さを示す指標として用いられています。JEF0からJEF5までの6段階で示され、数字が大きいほど被害が大きくなります。風速の目安や被害の例は次のとおりです。
- JEF0:風速25-38m/s、飛散物で窓ガラスが損傷、自動販売機が横転
- JEF1:風速39-52m/s、軽自動車が横転、木造住宅の屋根ふき材がはく離
- JEF2:風速53-66m/s、大型自動車が横転、コンクリートブロック塀の大部分が倒壊
- JEF3:風速67-80m/s、木造住宅で上部構造が変形・倒壊、マンションの手すりが変形
- JEF4:風速81-94m/s、工場や倉庫の大規模な庇で屋根ふき材がはく離・脱落
- JEF5:風速95m/s-、鉄骨住宅で上部構造が変形・倒壊、マンションの手すりが脱落
竜巻などの突風から身を守る方法
なるべく風の影響を受けづらい場所に移動して、風で飛んでくるものから身を守るということが基本的な行動になります。防災頭巾などがある場合はかぶって頭部を保護し、竜巻が近い場合は身体を潜めて頭部を中心に身を守ります。
屋外の場合
屋外にいる場合には、飛来物でケガをする可能性があるほか、強力な竜巻の場合には自分自身が飛ばされてしまう可能性があるため、速やかに身を守れる場所に移動する必要があります。頑丈そうな建物があれば建物の中に避難をします。万が一、非難できそうな建物がない場合には風の影響を受けづらいくぼみなどを探して身を潜めます。
吹き飛ばされる可能性がある物置やプレハブ小屋、車庫、大きな木、電柱の影、ブロック塀などからは離れるようにします。車の中も安全ではありません。車が飛ばされてしまう可能性がありますし、飛来物で車が損傷してしまう可能性もあるからです。
移動する時は飛来物でケガをしないように気を付けましょう。
屋内の場合
屋内にいるからといって安心はできません。家などの建物の中でもなるべく風の影響を受けづらく、物が飛んでこないような場所に移動します。
窓のそばからは離れましょう。風や飛来物によって窓ガラスが割れケガをする可能性が高いからです。窓や雨戸、シャッターなどは全て閉め、窓ガラスの飛散の影響を減らすためカーテンなども閉めておきましょう。
高い所ほど風の影響を受けやすいと考えられているため、2階建ての家などの場合には2階よりも1階の方が安全だと考えられています。ただし建物が損壊してしまう可能性もあるため、身を守りやすい空間を見つけて身をひそめるようにしましょう。地下室があれば安全と言われていて、アメリカのトルネード多発地域では地下シェルターがある家もあるようですが、日本の家には地下室はほとんどないので逃げ場にはなりづらいでしょう。
様子を見るや写真を撮るなどは厳禁
海外の竜巻(トルネード)の映像を見たことがある人も多いかもしれませんが、竜巻が発生したらまず自分の身を守ることが優先です。間違っても屋外に出て写真や映像を撮影しようとか、竜巻の様子を見てみようとしてはいけません。
距離が離れていても飛来物などで思わぬケガをする可能性がありますし、竜巻の移動速度は速いため突然自分の方向に向かってくる可能性もあります。絶対にやめましょう。
事前に備えられること
竜巻に事前に備えられることは多くはありませんが、常に竜巻の予報などの情報収集をするように心掛けること、強固で安全な建物に住むようにすることが挙げられます。
強固で安全な建物に住む
竜巻に限らず災害への全般的な対応策としてなるべく強固で安全な建物にするということが挙げられます。竜巻の場合もなるべく強固な建物であれば、被害を最小限にとどめることができる可能性が高まります。住まい選びの際は住まいの防災の性能を必ず意識するようにしましょう。
竜巻の予報
竜巻の情報収集については竜巻の主な2つの予報に注目するようにしておくことが大切です。いざという時にアクセスがしやすいように、スマートフォンや携帯電話などで情報提供を行っているサイトをブックマークやお気に入り登録しておくなどしておくと良いでしょう。
日本では竜巻の発生の予測について竜巻注意情報と竜巻発生確度ナウキャストの2つの情報提供が行われています。
竜巻注意情報
日本では竜巻の予報については、まず半日から1日前を目安として「竜巻など激しい突風のおそれ」という表現で注意が呼びかけられます。そして、更に数時間前には雷注意報の中で「竜巻」についても注意喚起が行われます。直前から1時間前には「竜巻注意情報」が発表されることになっています。報道機関による報道や気象庁のホームページなどで確認することができます。
竜巻発生確度ナウキャスト
竜巻発生確度ナウキャストとは気象レーダーの解析結果などを元に竜巻などの突風が発生する可能性が高い地域を発生確度2と発生確度1の2段階で発表しているもので、地図上で発生する可能性が高い地域を確認できます。
発生確度2は適中率が5~10%、捕捉率が20~30%とされていてより可能性が高いですが補足漏れも多い一方、発生確度1は適中率が1~5%、捕捉率が60~70%とされていて当たりづらいですが補足漏れが少ないという形になっています。
携帯版:国土交通省防災情報提供センター(気象ナウキャストから確認できます)
まとめ
- 竜巻などの突風に遭遇したら安全な場所に移動し身を守ることが大切です。
- 竜巻にも急に空が暗くなる、ひょうが降る、ごう音がするなど予兆があるので注意しましょう。
- 竜巻の予報についても日ごろからアクセスできるようにしておくことが重要です。