国民年金基金のメリットとデメリット
記事作成日:2017年7月6日
自営業者の人などのために国民年金に上乗せ給付を行うための国民年金基金制度のメリットとデメリットについてです。国民年金基金を利用することで国民年金に上乗せで年金を準備できるほか、拠出時には社会保険料控除の適用が受けられるなどのメリットがあります。しかし、一度支払った掛金は途中で戻ってこないなどのデメリットもあります。
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国民年金基金のメリット
2階部分・3階部分の上乗せの年金ができる
国民年金基金は厚生年金(2階部分)や企業年金(3階部分)がない自営業者、フリーランスなどの人に向けて用意された制度です。自ら掛金を拠出する必要がありますが、国民年金基金制度を利用することで会社員や公務員の人と同じように2階部分・3階部分の年金を準備することができます。
確定給付型で給付が決まっている
国民年金基金は確定給付型の年金なので、将来の受取金額が決まっています。国民年金基金の資産運用の結果に左右されず年金の受け取りが可能です。そのため、老後の生活設計がしやすいということがメリットになります。なお、制度変更による減額などの可能性が全くないわけではありません。
自分で運用の指図の必要がない
国民年金基金は確定拠出年金と異なり自ら資産運用の指図をする必要がなく、給付タイプを選んで掛金を拠出すれば将来年金が受け取れます。資産運用の指図が面倒だと感じる人にとっては資産運用の指図の手間の必要がありません。
税制の優遇措置がある
国民年金基金は掛金を支払うと全額が社会保険料控除の対象となるため、所得控除を受けることができます。また、老齢年金を受け取る場合には雑所得となりますが、公的年金等控除の適用が受けられます。
終身年金は長生きするほど受け取りが多くなる
国民年金基金には終身年金がありますが、終身年金は長生きをすればするほど受け取りが多くなり、メリットが大きくなります。終身年金は長生きのリスクに対応できます。
掛金は一定の範囲から選択できる
国民年金基金では給付タイプの組み合わせで掛金が変化します。掛金は給付タイプを選ぶことによって一定の範囲から調整することができるため、自分が負担できる範囲の掛金で始めることができます。
掛金の変更ができる
国民年金基金では給付タイプの口数を変更することによって掛金の額を増やしたり減らしたりすることができます。家計や事業の状況に応じて掛金の負担を調整することができるので、負担にならないように続けていくことができます。
死亡時には遺族一時金がある
国民年金基金は死亡した場合には遺族一時金があります。国民年金や厚生年金保険のように、遺族の生活に配慮し大きな金額がもらえるような設計には必ずしもなっていませんが、死亡時にも対応しています。
国民年金基金のデメリット
掛金が60歳・65歳になるまで途中で引き出せない
国民年金基金は一度掛金を支払うと、支払ったお金は60歳あるいは65歳になって老齢年金を受け取るか、死亡して遺族一時金を受け取るかしない限り途中で引き出せなくなってしまいます。一度支払ったお金が数十年間拘束されてしまうことになるため、掛金を支払って本当に問題ないか慎重に考える必要があります。
掛金は自分が負担しなければいけない
国民年金基金は自分が掛金の負担をすることになります。企業年金であれば事業主が基本的に費用を負担してくれますし、厚生年金の場合には、労使折半で保険料の半分は事業主が負担します。
国民年金基金は家計や事業の状況が苦しい場合には掛金の負担が難しいことがあります。
物価スライドがない
国民年金基金は確定給付型の年金ですが、物価スライドの制度がありません。物価が上昇した場合でも当初決められた通りの年金額が支払われるため、給付額が最初の想定よりも物価上昇分だけ実質的に少なくなってしまう可能性があります。
確定拠出年金であれば、物価上昇時に価格が上昇する資産で運用していれば物価上昇の影響を緩和できますが、国民年金基金では対応ができません。なお、物価下落時には国民年金基金からの年金は実質的に増えることになります。
予定利率は加入時の利率が適用される
国民年金基金は加入時の予定利率が適用され続けます。一概に有利とも不利とも言えませんが、運用環境が改善していく局面では、恩恵を受けられないため不利となることがあります。
国民年金基金制度ではおおむね5年に1度財政再計算が行われていますが、2014年4月以降予定利率は1.5%となっています。予定通りであれば次回の見直しは2019年4月になるとみられます。
遺族一時金は支払い掛金の合計を下回る可能性がある
遺族一時金は掛金の納付期間等に応じて金額が変わりますが、支払った掛金の合計額を下回る場合があります。また、保証期間がないB型の場合は年金受給前の死亡の場合は遺族一時金は1万円が支給されることになっています。
障害給付はない
国民年金基金には国民年金や厚生年金保険とは異なり障害を原因とする給付がありません。障害を負って働けなくなるなど収入が減少した場合でも、国民年金基金からの年金は頼りに出来ないのです。60歳あるいは65歳になるまで年金を待たなければならず、障害時には役に立たないのです。
自分で運用の指図ができない
国民年金基金では運用の指図が必要がないことは資産運用が苦手な人にはメリットとなるかもしれませんが、自分で運用を行いたいという人にとってはデメリットにもなります。国民年金基金は確定給付型なので資産運用の成否が直接将来の年金額に影響を与えることはできませんが、他人の資産運用に自分のお金を委ねる形になります。
制度変更リスクがある
資産運用の失敗により、年金資産の積立不足が生じてしまうと、約束していた給付が行えなくなる可能性があります。年金の支給額が減額されてしまうリスク、支給年齢が引き上げられるなど支給年数が短縮されてしまうリスク、国民年金基金・国民年金基金連合会が解散し年金制度が終了するリスクがあります。
公的な制度なので税金によって補填するという可能性もなくはないですが、税金による支援は一部の限られた人に対する支援になってしまい、世論の支持が得られるか不透明な部分があり、難しいと考えられます。
個人型確定拠出年金の拠出限度額が減る
国民年金基金は個人型確定拠出年金と掛金の拠出限度額を共有する仕組みになっていて、国民年金基金と個人型確定拠出年金の掛金が合計で月68,000円に収まるようになっている必要があります。
国民年金基金の掛金を支払うと、その分個人型確定拠出年金の掛金の枠が減ってしまいます。
まとめ
- 国民年金基金に掛金を支払うと全額が社会保険料控除の対象となるため節税のメリットがあります。
- しかし、国民年金基金は一度支払った掛金は60歳・65歳になって老齢年金を受け取るか、死亡時に遺族一時金を受け取るかしないとお金を引き出せないことがデメリットです。