確定給付年金と確定拠出年金の違い
記事作成日:2017年6月7日
確定給付型年金と確定拠出型年金の違いについてです。似ている言葉なので非常に分かりづらいのですが、何が確定しているのかに注目すれば理解しやすくなります。確定給付型年金は給付、つまり将来もらえる年金が確定しています。一方、確定拠出型年金は拠出、つまり掛金は確定していますが、将来もらえる年金は運用成績によって変動するため確定していません。
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確定給付型年金とは
確定給付型年金とは給付、つまり将来受け取ることができる年金(お金)が決まっている年金のことを言います。積み立てた年金原資の運用成果に関わらず、将来受け取る年金が約束されています。
加入者が運用の指示を出す必要がなく、資産運用・投資の知識は必要ありません。また、運用リスクも負わないため、将来の生活設計がしやすいというメリットもあります。
確定給付年金はDBとも言われますが、"Defined Benefit"の略です。
確定給付型年金の例
日本では、確定給付型年金といえば、厚生年金基金、基金型の確定給付企業年金(企業年金基金)、規約型の確定給付企業年金があります。
個人年金で確定給付型のもの
個人年金の一種である定額個人年金保険や財形年金貯蓄も将来の受取額がおおむね確定していると言えますので、確定給付型年金に分類することができます。しかし、日本では定額個人年金保険や財形年金貯蓄は通常は確定給付型年金とは言わず、確定給付型年金といえば、厚生年金基金か確定給付企業年金(基金型・規約型)の企業年金を指します。
確定拠出型年金とは
確定拠出型年金とは、拠出額(掛金)が確定している年金で、将来いくらもらえるかどうかは、運用実績に応じて変化するので、将来にならないと分からず確定していません。
拠出された掛金の運用は加入者自らの選択によって行わなければいけないため、運用が上手くいった場合には将来もらえる年金が増えますし、運用に失敗した場合には将来もらえる年金が少なくなってしまう可能性があります。
確定給付年金はDCとも言われますが、"Defined Contribution"の略です。
確定拠出型年金の例
確定拠出型年金には企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。企業型確定拠出年金は加入者個人が拠出できる場合(マッチング拠出制度)があります。
特殊な変額個人年金
変額個人年金は、拠出額(保険料)は確定していて、運用成果によって将来の年金が変動するため、一見、個人型確定拠出に類似しています。しかし、変額個人年金は通常の個人の確定拠出年金とは大きな違いがあります。
変額個人年金、運用を行うのが(保険)加入者ではなく、保険会社であるということです。つまり、拠出は加入者ですが、運用は加入会社ではない部分が違っています。また、あくまでも保険なので支払った保険料の一部は保険会社の利益になったり、保険会社の運営費になったりします。
確定給付年金と確定拠出年金の違い
確定給付型年金と確定拠出型年金の違いのまとめ
確定給付型年金と確定拠出型年金の違いについてまとめると次のようになります。ただし、一部例外はあります。
年金の種類 | 確定給付型年金(DB) | 確定拠出型年金(DC) | |
---|---|---|---|
確定するもの | 年金給付 | 拠出額(掛金) | |
確定しないもの | 拠出額(掛金) | 年金給付 | |
運用の指示 | 企業・基金 | 加入者個人 | |
資産管理 | まとめて管理 | 個人別に管理 | |
持ち運び | 一部制約あり | 可能 | |
途中引き出し | 脱退一時金で可能 | 原則不可 | |
加入者 の税制 (備考) | 拠出時 | (厚基)社会保険料控除 (確給)生命保険料控除 | 小規模企業共済等掛金控除 |
運用時 | 特別法人税課税(凍結中) 厚基は非課税部分あり | 特別法人税課税(凍結中) | |
給付時 | 年金:公的年金等控除 一時金:退職所得控除 | 年金:公的年金等控除 一時金:退職所得控除 |
(備考)厚基:厚生年金基金、確給:確定給付企業年金の略です。確定給付企業年金は給付時に加入者拠出があると控除されます。また、一時金は一時所得となる場合があります。障害給付金などの場合には非課税となることがあります。また、遺族給付金の場合には相続税が問題となる場合があります。詳細は税理士など専門家にご相談ください。
(出典)fromportal.comの担当者が作成
給付が確定しているか拠出が確定しているか
確定給付型年金と確定拠出型年金の最大の違いは、給付が確定しているのか、拠出が確定しているのかの違いです。
確定給付型年金は給付が確定
給付とは、お金や物・サービスなどを与えるという意味がありますが、確定給付型年金では受け取る年金のことを指し、将来もらえる年金が確定していることを意味します。もちろん様々な事情で年金は減額される可能性はありますが、基本的に確定しています。
一方で、確定している給付を達成するために、拠出額(掛金)は変動することがあり、確定していません。
確定拠出型年金は拠出が確定
拠出とは、お金や物を支払う・出すという意味がありますが、確定拠出型年金では年金として積み立てていくために支払う金額のことを指し、一定期間ごと(例:毎月)に支払う掛金が確定していることを意味します。
基本的には、毎月拠出する掛金が決まっているということです(注:拠出時期については月単位から年単位へと制度の変更が予定されています)。ただし、積み立てるために支払うお金は決まっていますが、運用の成績次第で将来もらえる年金は変動するため、確定していません。
運用するのは加入者か企業・基金か
確定給付型年金と確定拠出型年金では拠出して積み立てた年金の原資を誰が運用するかの違いがあります。
確定給付型年金は企業・基金が運用
確定給付型年金は将来もらえる給付が確定していますが、拠出して積み立てたお金は企業や基金がまとめて運用を行います。加入者が運用の指示を出すことはなく、企業や基金に運用を委ねることになります。資産管理は原則として加入者の資産を一括してまとめて管理されます。
確定拠出型年金は加入者が運用
確定拠出型年金は、確定給付型年金と異なり加入者が運用の指示を出すことになります。どんな金融商品でどれだけ運用するのかは加入者の選択によります。資産管理は個人別に残高が把握される形で管理されることになります。
運用リスクは誰に帰属し負担されるか
確定給付型年金と確定拠出型年金では運用結果を負担する主体が違っています。
確定給付型年金は運用リスクを企業・基金が負担
確定給付型年金は運用による結果を基本的に企業・基金が負担することになります。運用に失敗してしまった場合、企業・基金に負担が帰属するため、企業が穴埋めをするために拠出を増やさなければいけなくなることがあります。
確定給付型年金では将来の年金額は確定して決まっているので、年金が給付できるように原資を確保しておかなければならないのです。
確定拠出型年金は運用リスクを加入者本人が負担
確定拠出型年金は運用リスクは加入者本人に帰属し、加入者本人が負担することになります。拠出して積み立てたお金の運用に失敗してしまった場合には、将来もらえる年金が減ってしまうことがあるのです。
逆に運用に成功すれば、将来もらえる年金が増える可能性もあります。確定拠出型年金では将来の給付は確定していないのです。
加入者は資産運用・投資の知識が必要かどうか
確定給付型年金と確定拠出型年金では運用を行う人が違うため、加入者は資産運用・投資の知識が必要かどうかが異なってきます。
確定給付型年金では加入者に資産運用・投資の知識は必要ない
確定給付型年金では年金の運用を行うのは企業・基金になるため、加入者は資産運用・投資の知識は必要ありません。全てお任せなので、資産運用・投資のことが分からなくても、年金に関しては困らないのです。
確定拠出型年金では加入者に資産運用・投資の知識が必要
確定拠出型年金では年金の運用を行うのは加入者になるため、資産運用・投資の知識がないと満足な運用成績を上げられる可能性が下がってしまいます。
よく分からないまま運用をおこなうと偶然に頼った運用になってしまうためです。そのため、確定拠出型年金を加入している人に対する投資教育の重要性が指摘されています。
年金の持ち運び(ポータビリティ)があるかどうか
確定給付型年金と確定拠出型年金では転職や退職をした際の年金原資の持ち運び(ポータビリティ)にも違いがあります。
確定給付型年金のポータビリティには制約があることも
確定給付型年金は退職時・転職時のポータビリティが一応確保されていますが、持ち運びに制約がある場合があります。また勤務期間が短い場合は、持ち運ぶのではなく脱退一時金として受け取ることを選ぶ場合が多いと推測されます。
確定拠出型年金はポータビリティが高い
確定拠出型年金は、年金原資の持ち運びが確定給付型年金と比較すると容易になっていて、転職をしても年金原資を別の年金に移して持ち運ぶことがしやすくなっています。
途中の引き出しは可能かどうか
確定給付型年金と確定拠出型年金では途中の引き出しが可能かどうかで大きな違いがあります。
確定給付型年金は脱退一時金として受け取れる
確定給付型年金は退職時・転職時に働いてきた企業の年金制度から脱退する場合に、脱退一時金として受け取ることができる場合があります。
確定拠出型年金は原則途中引き出しは不可能
確定給付型年金は原則で途中の引き出しはできません。例外的に途中の引き出しが認められる場合がありますが、特殊な場合に限られます。
まとめ
- 確定給付型年金は将来の給付(受取)が確定している年金で、確定拠出型年金は一定期間ごとに支払う掛金(拠出額)が確定している年金で、将来受け取る年金額は運用成果によって変動します。
- 確定給付型年金の例には厚生年金基金や確定給付企業年金(基金型・規約型)があり、確定拠出型年金の例には、企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。