企業型と個人型の確定拠出年金を併用するメリットとデメリット
記事作成日:2017年6月26日
企業型と個人型の確定拠出年金を併用するメリットとデメリットについてです。企業型確定拠出年金を実施している場合でも、企業型確定拠出年金の規約において、個人型確定拠出年金の併用を認めることを定めれば、企業型と個人型の確定拠出年金の併用が可能になります。企業型と個人型の確定拠出年金を併用した場合の固有のメリットやデメリットについて説明しています。なお確定拠出年金に共通するメリット(優遇税制など)・デメリット(60歳以降の引き出しなど)については省略しています。
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企業型と個人型の確定拠出年金を併用するメリット
拠出限度額を有効活用できる
企業型確定拠出での事業主掛金が少ない場合には、拠出限度額を使い切ることができず、確定拠出年金の優遇税制のメリットを活用しきれていない場合がありますが、個人型確定拠出年金を併用することで企業型確定拠出年金で使いきれていない拠出限度額を有効活用できる可能性があります。
マッチング拠出と比較すると、確定給付型の企業年金制度がない企業においては、拠出額の有効活用という面で、事業主掛金が2万円未満の場合にマッチング拠出よりも、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金を併用のメリットがあることになります。
ただし、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金の併用による手数料負担増には注意が必要です。
拠出額がマッチング拠出より柔軟な場合がある
企業型確定拠出年金でマッチング拠出が認められている場合、加入者掛金の拠出額の選択肢を事業主(企業)が提示しますが、個人型確定拠出年金の場合は月当たり5,000円から1,000円単位で設定が可能であるため、マッチング拠出よりも、個人型を併用した場合の方が拠出額の選択が柔軟にできる場合があります。
運営管理機関が選択できるため運用商品を選びやすい
個人型確定拠出年金では運営管理機関を自分で選ぶことができるため、希望する運用商品が提示される運営管理機関を選ぶことで、希望する運用商品で運用できるようになります。
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金を併用すれば、個人型確定拠出年金の部分では自分の希望に沿った資産運用を行いやすくなります。
企業型と個人型の確定拠出年金を併用するデメリット
企業型と個人型で運用の指図が2つになり煩雑になる
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金の併用をすると、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金でそれぞれ運用の指図を出さなければいけなくなるため、煩雑になってしまいます。
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金では、運営管理機関の違いから運用商品の選択肢も異なってくると考えられますので、混乱してしまうかもしれません。
個人型の手数料が追加でかかってしまう
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金の併用をすると、個人型確定拠出年金においては口座開設・拠出・運用・給付・還付といった場面で手数料がかかってしまいます。企業型だけであれば、個人型の各種手数料は負担する必要がありませんが、企業型と個人型を併用することによって手数料が余計にかかってしまいます。
個人型確定拠出年金の拠出限度額は企業型と比較すると相対的に少額ですが、手数料負担が重く感じられるかもしれません。また、拠出限度額より少ない金額を拠出する場合には更に手数料負担が相対的に重くなってしまいます。
預金など利回りが低い運用商品で運用すると、個人型の確定拠出年金の掛金は手数料負担だけで元本割れしてしまう可能性すらあるため注意が必要です。
企業型と個人型を併用しても合計の拠出限度額は増えない
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金の併用をする場合、企業型確定拠出年金の拠出限度額の一部を削って個人型確定拠出年金に割り当てる形になっているため、企業型と個人型を併用しても拠出限度額が増えるわけではありません。
企業型で全額拠出を行う場合と比べると、企業型と個人型の併用で全額拠出を行った場合、個人型でも手数料がかかる分だけ、相対的に運用の効率は悪くなってしまいます。
企業が事業主拠出を出さなくても良い
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金の併用をする場合、企業型確定拠出年金の拠出限度額が個人型確定拠出年金に割り当てられる分だけ減額されるため、事業主はその分拠出を出さなくても良くなります。
事業主がたくさん掛金を拠出すればそれだけ従業員のメリットになりますが、事業主が掛金を抑え、従業員(加入者)に掛金を出してもらう形になってしまいます。
事業主の福利厚生負担を従業員の自助努力に転嫁していることに注意が必要です。
まとめ
- 企業型と個人型の確定拠出年金を併用するメリットは拠出限度額を有効活用できるという点です。
- 一方で、企業型と個人型の確定拠出年金を併用することによって個人型で余計に手数料がかかったり、運用の指図が煩雑になったりするというデメリットがあります。