個人型確定拠出年金(iDeCo)と国民年金基金の比較・違い
記事作成日:2017年7月14日
確定拠出年金(個人型・iDeCo)と国民年金基金の比較・違いについてです。個人型確定拠出年金(iDeCo)は確定拠出型で自ら資産運用のリスクを負う一方、国民年金基金は確定給付型なので運用の指図を出すこともなく定められた年金が受け取れますが、国民年金基金の加入者は伸び悩んでいて制度面で不安があります。個人型確定拠出年金は特別法人税課税のリスクがあることは要注意です。
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個人型確定拠出年金(iDeCo)と国民年金基金の比較
項目 | 個人型確定拠出年金(iDeCo) | 国民年金基金 |
---|---|---|
加入対象 | 大部分の人 | 国民年金第1号被保険者 |
種類 | 確定拠出型 | 確定給付型 |
インフレ対応 | 対応も可能 | 対応できず |
制度の信頼性 | 不安少ない | 不安があり |
受取方法の選択 | 受取時点 | 加入・増口時点 |
年金を一時金 | できる | できない |
終身年金 | 選択できる場合も | あり |
受取年齢 | 60~70歳 | 60歳・65歳 |
障害給付 | あり | なし |
遺族給付 | あり(資産残高に応じて) | あり(給付タイプ・加入期間に応じて) |
資産運用 | 加入者が指図 | 加入者は指図しない |
資産運用リスク | 加入者が負う | 加入者は基本的になし |
掛金 | 5,000円から1,000円刻み | 給付タイプによる |
手数料 | 掛金から引かれる | 掛金に含まれる |
税制 | 小規模企業共済等掛金控除 特別法人税課税のリスク | 社会保険料控除 |
(出典)fromportal.comの担当者が作成
個人型確定拠出年金(iDeCo)と国民年金基金の違い
加入対象
個人型確定拠出年金は、大部分の人が加入することができるようになりました。一方、国民年金基金は国民年金の第1号被保険者が加入対象となっています。国民年金基金か個人型確定拠出年金のどちらにするかを悩むことができるのは、自営業者やフリーランスなど国民年金の第1号被保険者の人です。会社員や公務員の人などは基本的に国民年金基金に加入することはできません。
確定給付型か確定拠出型か
個人型確定拠出年金(iDeCo)は支払う(拠出する)掛金は決まっていますが、将来の給付がいくらになるかは決まっていない確定拠出型の年金です。年金資産の運用成績に応じて将来もらえるお金が変わってくるからです。一方、国民年金基金は確定給付型の年金で、将来もらえる年金額(給付額)が決まっています。
インフレに対応できるか
年金は長期間経過した後に受け取るものであるため、インフレ対応ができるかどうかが重要になります。物価が大きく変動した時に対応する仕組みがないと、実質的な価値が減ってしまって年金をもらっても生活の足しにならない可能性があるからです。
国民年金基金は国民年金や厚生年金保険の公的年金と異なり、物価スライドの仕組みがありません。つまり、インフレ(物価上昇)に弱いのです。
一方、確定拠出年金も自動的に物価スライドするような仕組みはありませんが、運用する資産を自分で選ぶことができ、インフレ時には株価が上昇しやすいことから、株式を含む投資信託を選択するなど資産運用で工夫することでインフレに対応することは可能です。
制度の信頼性
国民年金基金は加入者数が伸び悩んでいることや確定給付型なので資産運用によって予定する利回りを達成できない場合の財政悪化懸念などがあり、給付が予定通り行われるかという不安があります。確定給付型の典型的な課題といえます。
一方、個人型確定拠出年金(iDeCo)は加入者が資産運用のリスクを負うため、国民年金基金よりも制度面の不安は少ないと考えられます。
受取方法の選択時期
国民年金基金は、加入する給付型(給付タイプ)によって受取方法が異なります。そのため、加入する時点、口数を増やす時点で受取方法を選ぶことになります。人生のかなり早い時期で意思決定が必要になります。
一方、個人型確定拠出年金(iDeCo)は受取時に受取方法が選択できるため、老後の生活が近づいた時点で意思決定をすることができます。
年金の受取を一時金に変更できるか
国民年金基金は、老齢給付は年金での受け取りと決まっているため、一時金に変更できません。一方、個人型確定拠出年金(iDeCo)は一時金で受け取ることも可能です。個人型確定拠出年金は退職金のような形で受け取ることもできます。
終身年金があるかないか
国民年金基金は最初に選ぶ1口目が終身年金となっていて、終身年金への加入が必須になります。一方で個人型確定拠出年金(iDeCo)は制度上終身年金を提供することは可能なのですが、運営管理機関によって終身年金での受け取りが可能な場合と用意されていない場合があります。
年金を受け取る年齢
国民年金基金は給付型によって受け取り年齢が60歳か65歳に決まっています。個人型確定拠出年金(iDeCo)は、加入期間に応じて受け取り開始年齢が60~65歳と変わりますが、70歳まで受け取りを伸ばすこともできます。
障害給付があるかないか
国民年金基金は障害を原因とする給付がありませんが、個人型確定拠出年金(iDeCo)は障害を原因とする給付(障害給付金)があります。
遺族給付があるかないか
国民年金基金は死亡を原因とする給付があり、加入している給付タイプや加入期間に応じて遺族一時金が支払われます。個人型確定拠出年金(iDeCo)にも死亡を原因とする給付があり、資産残高から支給に必要な手数料が差し引かれ死亡一時金が支払われます。
資産運用の指図
国民年金基金は、加入者が資産運用の指図をすることはありません。掛金を支払えば勝手に運用してもらって、年金を受け取ることができます。一方で、個人型確定拠出年金(iDeCo)は自ら資産運用の指図を出さなければいけません。資産運用・投資について学ぶ必要があります。
資産運用のリスク
国民年金基金は、確定給付型の年金なので加入者は資産運用リスクを基本的には負っていません。ただし、資産運用成績の悪化によって制度の継続が困難となるような場合は最終的に加入者に負担が発生する可能性があります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)は加入者が資産運用のリスクを負います。運用の指図の結果、年金資産を減らしていまい、将来の年金給付が少なくなってしまう可能性があります。
掛金の支払い
国民年金の第1号被保険者であれば、個人型確定拠出年金(iDeCo)も国民年金基金も両方加入することができますが、拠出限度額(月68,000円)は個人型確定拠出年金(iDeCo)と国民年金基金で共有されるため両方に加入する場合は両方の掛金を合わせて68,000円に収まっている必要があります。
なお、個人型確定拠出年金の掛金は5,000円から1,000円刻みで選択が可能で、国民年金基金は加入する給付タイプの掛金に応じて掛金が変化します。
手数料の扱い
国民年金基金は掛金の水準は手数料など運営に必要な費用等を勘案して定められています。そのため、あらかじめ決められた将来の支給額から手数料が引かれて減るということはなく、掛金の支払いに含まれています。
個人型確定拠出年金(iDeCo)は拠出した掛金を積み立てて運用していきますが、運営に必要な手数料が掛金から引かれていき残ったお金を積み立てて運用します。口座管理に必要な手数料は毎月引かれていくものもあります。
税制
国民年金基金の掛金の支払いは全額社会保険料控除となり所得控除の適用があります。個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金の支払いは全額小規模企業共済等掛金控除となり同じく所得控除の適用があります。どちらも所得があれば税制上のメリットが得られます。
受取時には老齢を原因としている場合、一時金の場合は退職所得控除、年金の場合は公的年金等控除の適用が受けられます。
個人型確定拠出年金は運用益(フロー)は非課税となっていますが、積立金(ストック)には特別法人税が課されることになっています。しかし、現在は課税が凍結されています。将来課税が再開する可能性が全くないわけではありません。
まとめ
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)は確定拠出型で自ら資産運用のリスクを負いますが、インフレへの対応が可能です。ただし、特別法人税課税のリスクがあることは要注意です。
- 国民年金基金は確定給付型なので運用の指図を出すこともなく定められた年金が受け取れますが、国民年金基金の加入者は伸び悩んでいるなど制度面で不安があるほか、インフレへの対応ができないことが問題です。