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生活保護制度とは

記事作成日:2017年5月30日

生活保護制度とは、生活に困窮している人に対して、健康で文化的な最低限度の生活を保障するために金銭の支給など必要な保護を行う仕組みです。社会保障制度の公的扶助として行われます。生活保護制度では、生活のためにあらゆる努力を行っても、収入が最低生活費に満たない場合に、収入と最低生活費の差額を保護費として受け取ることができます。

生活保護は生活保護法の要件を満たす限り、誰でも差別なく平等に受けることができます。普通に生きることができている間は利用することはないかもしれませんが、本当に困った時に頼りになる制度です。

(参考)社会保障制度
社会保障社会保険狭義の社会保険
労働保険
社会扶助公的扶助
社会手当
社会福祉サービス
関連制度各種法規制
税制
融資制度

(出典)fromportal.comの担当者が作成

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生活保護制度の重要性

生活保護制度は、生きていくことが困難になった時に頼ることができる最後の砦ともいうべき制度です。自らの努力ではもうどうにもならなくなった時に、保護を受けることができる制度なのです。普通に働いて生活を送る分には、保護を受ける必要性を感じないかもしれませんが、人生は何が起こるか分かりません。何かのきっかけに自分が困難な状況に置かれてしまうこともあり得るのです。

生活保護を受けるための条件(要件)

生活保護は、生活に困窮する人が、資産、能力、その他あらゆるものを生活の維持のために活用し、さらに扶養義務者による扶養や他の法律に定められている扶助を活用しても、収入が厚生労働大臣が定める基準(最低生活費)に満たない場合には、最低生活費と収入の差額が保護費として支給されます。

生活保護費=収入-最低生活費

資産の活用

保護を要する人が資産を保有している場合には、まず資産を活用することが必要になります。預貯金は引き出し、土地や建物などの不動産がある場合には、売却などをして生活費を確保することが求められます。

能力の活用

能力の活用とは、収入を得るための能力、つまり働く能力です。障害などによって働くことができない場合は別ですが、働く能力があるのであれば、働いて収入を自ら確保することが求められます。

あらゆるものの活用

あらゆるものとは、資産の売却による収入や労働による収入以外のあらゆる収入を指していて、年金や手当があれば活用することが求められます。

扶養義務者の扶養・他の法律による扶助の優先

保護を必要としている人を扶養する義務がある人がいる場合には、まず扶養義務者が扶養を行うことが求められます。また、他の法律によって扶助を受けられる場合は、生活保護の前に他の法律による扶助が優先されます。

生活保護法第4条第1項 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

生活保護法第4条第2項 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

生活保護法第8条第1項 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。

生活保護第8条第2項 前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。

(出典)生活保護法より引用

生活保護の種類

生活保護の種類には次のようなものがあります。

  • 生活扶助
  • 教育扶助
  • 住宅扶助
  • 医療扶助
  • 介護扶助
  • 出産扶助
  • 生業扶助
  • 葬祭扶助

生活扶助

生活扶助とは、日常生活のために必要な飲食費、被服費、光熱水道費、移送費などのための扶助です。冬期加算、期末一時扶助があります。また特定の状況にある人には、妊産婦加算、障害者加算、介護施設入所者加算、在宅患者加算、放射線障害者加算、児童養育加算、母子加算などがあります。

教育扶助

教育扶助とは、義務教育(小学校・中学校)のために必要な学用品費、給食費などのための扶助です。

住宅扶助

住宅扶助とは、住まいを借りるための家賃・間代、転居時の敷金、契約更新料、住まいの修理費などの扶助です。

医療扶助

医療扶助とは、医療を受けるための扶助ですが、費用は医療機関に直接支払われるため、本人負担なしで医療機関を受診することができます。

介護扶助

介護扶助とは、介護を受けるための扶助ですが、費用は介護事業者にに直接支払われるため、本人負担なしで介護サービスを受けることができます。

出産扶助

出産扶助とは、出産のための費用のお金です。

生業扶助

生業扶助とは、小規模の事業を営むための資金、生業を行うための器具・資料代、働くために必要な技能の習得費、就職のために必要となる洋服・履物等の購入費用のためのお金です。また、高等学校等への就学費用が高等学校等就学費として支給されます。

葬祭扶助

葬祭扶助とは、葬祭を行うための費用です。

収入を認定する際の控除

生活保護は収入と最低生活費の差額分だけ保護費が支給されますが、収入を認定する際に控除される金額があります。控除される金額の分だけ、支給される保護費が増えることになります。

認定される収入額=勤労収入-勤労控除-実費控除

勤労控除

勤労控除とは、勤労を促進するために収入と認定される金額を計算する際に勤労収入から控除される金額のことで、勤労控除額の分だけ、収入額が少なくなり、その分、保護費をもらえるようになります。基礎控除、特別控除、新規就労控除、未成年者控除があります。

実費控除(必要経費の控除)

勤労控除とは別に、実費、例えば通勤費や社会保険料などの必要経費は、勤労控除と同様に、収入と認定される金額を計算する際に収入から控除されます。

生活保護の原理・原則

生活保護法において、以下のような生活保護の原則が定められています。

無差別平等の原則

生活保護は生活保護法の要件を満たしている限り、無差別平等に受けることができると定められています。日本国憲法で国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとされているので、困窮している理由などを問われないのです。(生活保護法第2条)

最低生活保障の原則

生活保護で保障される最低限度の生活は、日本国憲法で定められている健康で文化的な生活です。最低限度の生活ができるように、保護費が支給されます。(生活保護法第3条)

保護の補足性の原則

生活保護は、資産や能力、その他あらゆるものを活用し、それでも収入が最低生活費に満たない場合に保護が行われます。また、扶養義務者がいる場合などは扶養義務者の扶養などが優先されます。(生活保護法第4条)

申請保護の原則

生活保護は、原則として保護を必要とする人などが申請してから行われます。申請をしなければ生活保護が受けられません。ただし、保護を必要とされる人が急迫した状況にある場合は例外で、申請がなくても必要な保護が行われることがあります。(生活保護法第7条)

基準及び程度の原則

生活保護は、厚生労働大臣が定めた最低生活費に収入が満たない場合に、不足分だけ保護が行われます。最低生活費は、保護が必要な人の年齢、性別、世帯構成、所在地域などを考慮して定められます。(生活保護法第8条)

必要即応の原則

生活保護は、保護を必要としている人の年齢、性別、健康状態など個人・世帯の実情の違いを考慮して行われます。(生活保護法第9条)

世帯単位の原則

生活保護は、原則として世帯単位で行われます。(生活保護法第10条)

生活保護の権利と義務

生活保護を受ける際の権利と義務についてです。

生活保護の権利

生活保護を受ける際の権利です。

不利益変更の禁止

生活保護を受けている人は、正当な理由がない限り、決定された生活保護を不利益に変更されることがありません。(生活保護法第56条)

公課禁止

生活保護を受けている人は、生活保護として給与・貸与された金銭・物品を標準として租税を課せられることがありません。(生活保護法第57条)

差押禁止

生活保護を受けている人は、生活保護として給与・貸与された金銭・物品や金銭・物品を受ける権利を差し押さえられることがありません。(生活保護法第58条)

生活保護の義務

生活保護を受ける際には、義務があります。必要な届出を行うことや指示に従うことなどが求められます。

譲渡禁止

生活保護や就労自立給付金の支給を受ける権利は他の人に譲り渡すことができません。(生活保護法第59条)

生活上の義務

生活保護を受けている人は、能力に応じて働くこと、健康の保持・増進に努めること、収入や支出を把握し支出の節約を図ることなど生活の維持・向上が求められます。(生活保護法第60条)

届出の義務

生活保護を受けている人は、収入や支出などの状況に変動があった場合、居住地や世帯構成に変更があった場合には、届け出る義務があります。(生活保護法第61条)

指示等に従う義務

生活保護を受けている人は、生活保護法に定められた指示等を受けた場合には従わなければいけません。(生活保護法第62条)

生活保護を受けるための手続きの流れ

生活保護を受けるためには次のような手続きの流れになります。

生活保護を受けるための相談・申請

生活保護を受けるためには、福祉事務所の生活保護の担当者に相談・申請を行うことになります。福祉事務所がない町や村に住んでいる場合には町役場、村役場でも手続きを受け付けています。

生活保護の決定のための調査

生活保護の申請が行われると、生活保護が必要かどうかを見極めるために調査が行われます。生活状況、資産、扶養、収入などの調査が行われます。

生活保護費の支給

生活保護が決定されると生活保護費が支給されます。

生活保護に関係する施設

生活保護に関連する保護施設として次のような施設があります。

生活保護に関連する保護施設
施設の種類施設の役割
救護施設著しい障害があるため日常生活が困難な人が入所する施設です。
更生施設養護や生活指導が必要な人が入所する施設です。
医療保護施設医療が必要な人に医療の給付を行う施設です。
授産施設働く能力が限られている人に対して就労や技能習得の支援をする施設です。
宿所提供施設住居がない世帯に対して住居を提供する施設です。

(出典)fromportal.comの担当者が作成

まとめ

  • 生活保護は、生活に困窮している人に対して、健康で文化的な最低限度の生活を保障するために金銭の支給など必要な保護を行う仕組みです。
  • 生活保護は、生活に困窮していて、生活保護法に定められた要件を満たす場合には、無差別で平等に受けることができます。

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【生活保護制度とはの記事は終わりです】

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