社会保険とは
記事作成日:2017年6月3日
社会保険制度とは、国民の生活の安定を支える社会保障制度の一部で、公的な保険の制度になります。社会保険制度は民間の保険と同じように保険の仕組みを利用して、あらかじめ保険料を徴収し、病気・けが・出産・老齢・障害・死亡・介護・失業・教育訓練受講などの保険事故が発生した場合に、現金やサービスを保険給付として提供する仕組みです。
スポンサーリンク
社会保険制度の全体像
社会保険という言葉は広い意味で用いられる広義の社会保険と、限定的・狭い意味で用いられる狭義の社会保険の2つの意味で用いられる場合があります。
日本では公的な保険として、基本的に全国民を対象としている医療保険、年金保険、介護保険と、労働者を対象としている雇用保険、労働者災害補償保険(労災保険)があり、医療保険、年金保険、介護保険だけを社会保険といい、雇用保険と労災保険を労働保険という場合があります。
また、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険を含めて社会保険という場合があります。つまり「広義の社会保険=狭義の社会保険+労働保険」になります。
広義の社会保険 | 狭義の社会保険 | 医療保険 |
---|---|---|
年金保険 | ||
介護保険 | ||
労働保険 | 雇用保険 | |
労働者災害補償保険(労災保険) |
(出典)fromportal.comの担当者が作成
社会保険は社会保障制度の一部
社会保険制度は社会保障制度の一部で、国民の生活の安定を支えるために重要なものです。病気やけがの時に使える医療保険がなければ、病気やけがをしてしまうと金銭的負担が重くなってしまいますし、医療費が支払えなければ病院に通うことを躊躇し症状が悪化してしまう恐れがあります。年金がなければ老後の生活資金を準備するのが難しくなってしまうかもしれません。
社会保険制度は、国民が直面しやすい生活の安定を脅かす可能性がある状況について、保険の仕組みを利用して備えることで、国民生活の安定を図るものなのです。
社会保険は社会保障制度の4つの柱と呼ばれる、社会保険、社会福祉、公的扶助、公衆衛生の1つです。
社会保障制度 | 社会保険 |
---|---|
社会福祉 | |
公的扶助 | |
公衆衛生 |
(出典)fromportal.comの担当者が作成
社会保険の防貧的機能
社会保険制度は、生活の安定に大きな影響がありそうな保険事故が発生した場合に給付を行うことで、国民が困窮しない様に未然に防ぐ防貧的な機能があります。逆に生活保護(公的扶助)制度は、困窮している人を困窮から救い出す救貧的な機能があります。
社会保険と民間保険の違い
社会保険も民間保険も保険制度であることは共通していますが、社会保険は公的な保険であるため、基本的に国民を幅広く加入の対象としており、条件を満たすと強制加入となり、通常選択の自由はありません。また、社会保険は保険料によって運営されますが、税金などによって運営資金が負担される場合があります。
狭い意味の社会保険
狭い意味(狭義の)社会保険には医療保険制度、年金保険制度、介護保険制度があります。
医療保険
医療保険制度とは、病気、けが、死亡、出産を保障する制度です。医療保険は勤め先や年齢によって加入する保険の種類が変わります。
主に自営業者、非正規雇用者、75歳未満の年金生活者、無職の人などが加入する国民健康保険、会社員(サラリーマン)が加入する健康保険(協会けんぽ)、一部大企業等の会社員(サラリーマン)が加入する組合健康保険、公務員などが加入する共済組合、船員が加入する船員保険、75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度があります。
医療保険の種類
- 国民健康保険
- 協会けんぽ(健康保険)
- 組合健康保険
- 共済組合(短期給付)
- 船員保険
- 後期高齢者医療制度
年金保険
年金保険制度とは、老齢(長生き)、障害、死亡を保障する制度です。年金制度には提供主体で大きく分けると公的年金、企業年金、個人年金の3つの種類があり、社会保障制度として公的年金が重要になります。
公的な年金保険には、国民年金と厚生年金保険があります。原則として20歳以上60歳未満の全ての国民が加入するのが国民年金で、会社員や公務員などの人が国民年金に上乗せして加入するのが厚生年金保険です。
以前は、公務員等は共済組合で共済年金に加入する仕組みとなっていましたが、現在では被用者年金は厚生年金保険に一元化されています。
年金制度の種類
年金制度には、公的年金保険、私的年金(企業年金制度・個人年金制度)があります。
公的年金保険
公的に社会保険制度として運営される年金保険制度です。基本的に国民は全員強制加入となる国民年金、雇われて働く人(公務員を含む)が基本的に全員加入となる厚生年金保険があります。また、公務員の年金払い退職給付は公的年金の性格がありますが、上乗せ給付なので企業年金制度に近いものと考えられます。
- 国民年金
- 厚生年金保険
- (年金払い退職給付(公務員等))
企業年金制度(私的年金)
企業等の負担で実施される企業年金制度には次のようなものがあります。公務員等に支給される年金払い退職給付を除いた確定給付企業年金(基金型・規約型)、厚生年金基金、企業型確定拠出年金、自社年金は企業年金です。また、公務員の年金払い退職給付は、厚生年金の上乗せ給付で企業年金制度と同じ性格があるため、企業年金制度に近いものとして分類しています。
- 確定給付企業年金(基金型・規約型)
- 厚生年金基金
- 企業型確定拠出年金
- 自社年金
- 年金払い退職給付(公務員等)
個人年金制度(私的年金)
主に個人の負担によって加入する個人年金・私的年金です。
- 企業型確定拠出年金のマッチング拠出部分
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 財形貯蓄(財形年金貯蓄)
- 個人年金保険
- 国民年金基金
- 付加年金
介護保険
介護保険制度とは、介護を保障する制度です。介護保険では、介護が必要になった状態(要介護状態)、または支援が必要になった状態(要支援状態)に関して保険給付(介護給付・予防給付)が行われます。
介護保険は40歳以上の人が加入し、65歳以上の人が第1号被保険者、40歳以上65歳未満の人が第2号被保険者となり、第1号被保険者の人は原因を問わずに要支援・要介護状態になった際に予防給付・介護給付を受けることができます。
しかし、第2号被保険者は末期がんや間接リウマチなど加齢に起因する特定疾病が原因で要支援・要介護状態になった場合でないと予防給付・介護給付を受けることはできません。
- 65歳以上:原因を問わず介護給付・予防給付
- 40歳以上65歳未満:特定疾病の場合だけ介護給付・予防給付
労働保険
労働保険には、雇用保険制度と労働者災害補償保険(労災保険)制度があります。
雇用保険
雇用保険制度とは、労働者の失業、雇用継続困難、教育訓練受講を保障する制度です。
労働者が失業した場合には、求職者給付として、いわゆる失業手当として基本手当が支給されるほか、公共職業訓練等を受けるための技能習得手当や寄宿手当、失業中の病気・けがの保障をする傷病手当が受けられます。高齢者、短期雇用者、日雇雇用者の場合には別の給付があります。
また、就職するための就職促進給付として就業手当、再就職手当、常用就職支度手当、就業促進定着手当、移転費、広域求職活動費などが支給される場合があります。
労働者が職業教育訓練を受けた場合には、教育訓練給付として教育訓練教育給付金などが支給される場合があります。
そのほか、労働者の雇用の継続が困難となるような場合に、雇用の継続を図るために給付される雇用継続給付として高年齢雇用継続基本給付金、育児休業給付金、介護休業給付金などがあります。
保険事故 | 保険給付の例 | |
---|---|---|
失業 | 求職者給付 | 基本手当 技能習得手当 傷病手当 など |
就業促進給付 | 就業手当 など | |
教育訓練受講 | 教育訓練給付 | 教育訓練給付金 など |
雇用継続困難 | 雇用継続給付 | 高年齢雇用継続基本給付金 育児休業給付金 介護休業給付金 など |
(出典)fromportal.comの担当者が作成
労働者災害補償保険(労災保険)
労働者災害補償保険(労災保険)制度とは、業務災害や通勤災害を補償する制度です。労働者災害補償保険(労災保険)は業務上あるいは通勤による負傷・疾病・障害・死亡などについて保険給付を行います。
治療のための療養補償給付(療養給付)、生活保障のための休業補償給付(休業給付)、傷病補償年金(傷病年金)、障害のための障害補償給付(障害給付)、介護のための介護保障給付(介護給付)、死亡時の遺族のための遺族補償給付(遺族給付)、葬祭料(葬祭給付)などがあります。
また、健康診断で異常が発見された場合の二次健康診断給付があります。
保険事故 | 業務災害 | 通勤災害 |
---|---|---|
治療 | 療養補償給付 | 療養給付 |
生活保障 | 休業補償給付 傷病補償年金 | 休業給付 傷病年金 |
障害 | 障害補償給付 | 障害給付 |
介護 | 介護保障給付 | 介護給付 |
死亡 | 遺族補償給付 葬祭料 | 遺族給付 葬祭給付 |
(出典)fromportal.comの担当者が作成
まとめ
- 社会保険制度は社会保障制度の4つの柱と呼ばれる社会保険、社会福祉、公的扶助、公衆衛生の1つで、国民生活に影響がありそうな保険事故が発生した場合に、保険給付を行います。
- 社会保険制度には、医療保険制度、年金保険制度、介護保険制度、雇用保険制度、労働者災害補償保険制度(労災保険制度)があります。このうち、医療保険制度、年金保険制度、介護保険制度は狭義の社会保険制度とされる場合があり、雇用保険制度、労働者災害補償保険制度(労災保険制度)は労働保険制度とされる場合があります。