企業年金と厚生年金の違い
記事作成日:2017年7月3日
企業年金と厚生年金(厚生年金保険)の違いについてです。厚生年金(厚生年金保険)とは会社員や公務員の人が加入する年金制度で、基本的に会社員や公務員であればだれでも入ることになる強制的な公的年金制度です。一方で、企業年金とは企業年金制度がある企業に勤めている会社員だけが加入することになる私的年金制度で、厚生年金に上乗せで給付を行う年金になります。
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企業年金と厚生年金の違いの比較まとめ表
項目 | 厚生年金 | 企業年金 |
---|---|---|
年金種別 | 公的年金 | 私的年金 |
位置づけ | 2階部分 | 3階部分 |
実施主体 | 政府(国) | 企業 |
費用負担 | 労使折半 | 基本的に企業 |
減額リスク | 少子高齢化などによる制度変更 | 資産運用の失敗・業績悪化など |
年金制度例 | 厚生年金 | 厚生年金基金 基金型確定給付企業年金(企業年金基金) 規約型確定給付企業年金 企業型確定拠出年金 年金払い退職給付 中小企業退職金共済制度(中退共) 特定退職金共済団体制度(特退共) 石炭鉱業年金基金 自社年金 |
(出典)fromportal.comの担当者が作成
日本の年金で厚生年金は2階部分で企業年金は3階部分
日本の年金制度は3階建て、あるいは4階建てと言われます。基本的に国民全員が加入することになる1階部分の年金制度が国民年金(基礎年金)で、会社員や公務員の人は基本的に全員加入する厚生年金は2階部分の年金制度になり、1階部分の国民年金に上乗せして給付がもらえる制度です。
公務員の人は以前は共済年金という制度でしたが被用者年金の一元化に伴い共済年金は厚生年金に一元化されることになりました。
更に一部の会社員の人は3階部分の企業年金制度があります。企業年金に加入すると1階部分の国民年金、2階部分の厚生年金に加えて3階部分の企業年金も受け取れるため、年金が充実します。
なお、公務員の人は旧職域加算と呼ばれる制度や、年金払い退職給付が企業年金制度に相当し、厚生年金に上乗せして支払われます。旧職域加算部分は公的年金の性質が強く、年金払い退職給付は企業年金制度に近いものです。
厚生年金は国が実施し企業年金は企業が実施
厚生年金は厚生年金保険法厚生年金保険法に基づく公的年金制度で政府が実施するものです。一方、企業年金は確定給付企業年金法や確定拠出年金法などに基づいて企業が主体となって実施する私的年金制度です。
厚生年金は制度変更リスク、企業年金は業績悪化などのリスクがある
厚生年金は制度変更により不利になる可能性
厚生年金は政府が実施する制度ですが、長寿化、少子化などの影響を受けて、過去制度変更が繰り返されていて、受け取ることができる年金が変更されています。
厚生年金制度は社会情勢の変化や少子高齢化の影響等によって将来制度が変更となるリスクがあり、受給開始年齢が引き上げられたり、受給額が引き下げられるリスクがあります。
企業年金は資産運用の失敗や企業の業績悪化などで立ち行かなくなる可能性も
資産運用の失敗で運営が危うくなる場合も
企業年金のうち、確定給付型の年金制度である厚生年金基金や基金型確定給付企業年金(企業年金基金)、規約型確定給付企業年金などは資産運用のリスクを事業主(企業)が負っているため、資産運用の失敗により企業の財務諸表に悪影響を与える可能性があります。
年金制度が企業の財務状況に影響を与える場合には、企業が年金制度を縮小させる可能性があります。厚生年金基金制度は資産運用の失敗による積立金不足から制度を廃止する方向での見直しが行われています。
母体企業の業績悪化による拠出減額・停止
企業年金は基本的に事業主(企業)の負担によって実施されますが、企業の業績が悪化して企業年金を実施する余裕がなくなった場合には、確定給付型・確定拠出型を問わず、拠出が打ち切られてしまう可能性があります。企業年金は企業の業績悪化などによって制度が持続できないリスクがあるのです。
厚生年金は労使折半で企業年金は企業負担が原則
厚生年金は事業主(企業)と従業員の労使折半で費用を負担しますが、企業年金は基本的に事業主(企業)が費用を負担します。厚生年金の負担は厚生年金保険法によって定められていますが、企業年金ではどれくらい負担するかなどは事業主にある位程度の選択の幅があります。
企業年金は企業によって様々な種類がある
私的年金の一種である企業年金には様々な種類があり、どのような制度設計をするのかは事業主(企業)に委ねられています。確定給付型の厚生年金基金、確定給付企業年金(企業型(企業年金基金)、規約型)や確定拠出型の企業型確定拠出年金などがあります。
企業年金は、企業が実施するものですが、基本的に確定給付企業年金法や確定拠出年金法など法律によって裏付けられた制度で加入者の受給権の保護に配慮されています。なお、自社年金は企業が独自に行うものですが、自由度が高い年金です。
企業年金の例
- 厚生年金基金
- 基金型確定給付企業年金(企業年金基金)
- 規約型確定給付企業年金
- 企業型確定拠出年金
- 年金払い退職給付
- 中小企業退職金共済制度(中退共)
- 特定退職金共済団体制度(特退共)
- 石炭鉱業年金基金
- 自社年金
まとめ
- 厚生年金と企業年金は別のもので、厚生年金は国が実施する公的な年金制度で、企業年金は企業が任意で実施する私的な年金制度です。
- 厚生年金は国民年金に上乗せ給付を行う2階部分の年金制度で会社員や公務員の人が加入し、企業年金は企業年金を実施する企業に勤める会社員が加入し厚生年金に上乗せ給付を行う3階部分の年金制度です。