高等専門学校と専門学校の違い
記事作成日:2018年1月23日
高等専門学校と専門学校は同じ専門学校と名前がついているため似ていると考えるかもしれませんが、日本の教育制度における位置づけは別のものなので注意が必要です。高等専門学校と専門学校はともに高等教育機関であること、職業教育を行うことは類似性があります。
一方で、高等専門学校は中学校等を卒業した人が通う学校で修業年限は5年で、学校教育法上は高等学校や大学と同じ学校と位置付けられています。専門学校は高等学校等を卒業した人が通い、修業年限は1~4年が一般的です。専門学校は学校教育法上では高等学校や大学と同じ種類の学校とは位置付けられておらず、専修学校と位置付けられています(専門学校は専修学校専門課程)。
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高等専門学校と専門学校の違い
高等専門学校と専門学校の主な違い(一部共通点・類似点)は次の通りとなります。
種別 | 高等専門学校 | 専門学校 |
---|---|---|
教育水準 | 高等教育(ISCED Level5) | 高等教育(ISCED Level5) |
学校種類 | 学校 | 専修学校 |
入学資格 | 中学校卒業 | 高校卒業 |
目的 | 深く専門の学芸を教授・職業能力の育成 | 職業・生活能力の育成・教養の向上 |
修業年限 | 5年(一部5.5年) | 1~4年 |
学位 | なし | なし |
称号 | 準学士 | 専門士・高度専門士 |
学習内容 | 工業、商船など | 工業、農業、医療、衛生、教育・社会福祉、商業実務、服飾・家政、文化・教養 |
就職率 | 100% | 96.1% |
大学編入 | 可能 | 一部可能(修業年限2年など条件あり) |
専攻科 | あり | なし |
大学院進学 | 専攻科進学・大学編入後可能 | 一部可能(修業年限4年など条件有)・大学編入後可能 |
(注)就職率は2016年度卒業者の2017年4月1日時点の数値。就職率は就職希望者に対する就職者の割合です。
(出典)文部科学省・厚生労働省の平成28年度大学等卒業者の就職状況調査(大学等卒業者の就職状況調査(文部科学省発表分)・大学等卒業者の就職状況調査(厚生労働省発表分))、学校教育法を基にfromportal.comの担当者が作成
高等専門学校は「学校」で専門学校は「専修学校」
高等専門学校と専門学校は学校としての種類が違います。学校などについて定めている学校教育法では、学校とは「幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校」であるとしています(いわゆる「一条校」)。一方で、専門学校は専修学校の一種で、高等学校を卒業した人などが入学する専門課程を置く専修学校を専門学校と呼ぶとされています。
高等専門学校などの学校は、より公的な色彩が強く、法令等による規制が厳しい傾向があります。専修学校は学校ではないものの、一定の基準を満たした上で、専門的な教育を行う機関と位置付けられます。
- 学校教育法第1条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
- 学校教育法第124条 第1条に掲げるもの以外の教育施設で、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として次の各号に該当する組織的な教育を行うもの(中略)は、専修学校とする。(各号略)
- 学校教育法第125条第1項 専修学校には、高等課程、専門課程又は一般課程を置く。
- 学校教育法第126条第2項 専門課程を置く専修学校は、専門学校と称することができる。
(出典)学校教育法より引用
高等専門学校と専門学校はともに高等教育機関
高等専門学校と専門学校はともに高等教育機関と位置付けられています。国際標準教育分類(ISCED)ではLevel5と位置付けられます。高等専門学校の前半3年は中等教育後期(Level3)に相当しますが、後半の2年は高等教育の位置づけとなります。
高等専門学校の入学資格は中学校卒業で専門学校は高等学校卒業
高等専門学校の入学資格は中学校等を卒業していることです。中学校卒業だけでなく、義務教育学校や特別支援学校中学部の卒業者、中等教育学校前期課程の修了者を含みます。
一方で、専門学校は高等学校等を卒業していることが入学資格になります。高等学校卒業だけでなく、中等教育学校や特別支援学校高等部の卒業者、一定の条件を満たした高等専修学校の修了者などが入学できます。
高等専門学校も専門学校も職業教育を行う
高等専門学校も専門学校も職業に関する能力を育成するという点は共通しています。学校教育法によると、高等専門学校の目的は「深く専門の学芸を教授」のほか、「職業に必要な能力を育成」とされています。
一方で専門学校(専修学校)の目的は、「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成」または「教養の向上を図る」こととされています。
高等専門学校では深く専門の学芸を教授という点が専門学校と異なっていて、専門学校では、生活に必要な能力を育成ということや教養の向上を図るという点が高等専門学校と異なっています。この点は高等専門学校と専門学校で学ぶことができる分野の違いとなって表れます。
- 学校教育法第115条第1項 高等専門学校は、深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする。
- 学校教育法第124条 第1条に掲げるもの以外の教育施設で、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として次の各号に該当する組織的な教育を行うもの(中略)は、専修学校とする。
(出典)学校教育法より引用
修業年限は高等専門学校が5年で専門学校は1~4年
基本的な修業年限は高等専門学校は5年となっています。中学校等を卒業した後で進学することになるため、高等学校の3年間と大学の前半2年間を合わせたようなイメージです。例外的に商船系では修業年限は5.5年となります。一方で専門学校の修業年限は1年以上となりますが、基本的には1~4年と専門学校によって異なります。
得られる称号は高等専門学校は準学士で専門学校は専門士や高度専門士
高等専門学校や専門学校を卒業した場合に学位を得ることはできませんが、高等専門学校は準学士の称号を、専門学校は一定の条件の下で専門士あるいは高度専門士の称号を得られる場合があります。
なお、学位と称号の違いは、国際的に通用するのが学位で国際的な通用性がないのが称号とされています。
高等専門学校は工業や商船の分野を学び専門学校は主に8つの分野を学べる
高等専門学校は基本的に工業系と商船系の学科が置かれていて、工業や商船に関することを学ぶことになります。専門学校は主に、工業、農業、医療、衛生、教育・社会福祉、商業実務、服飾・家政、文化・教養の8つの分野について学ぶことができます。
高等専門学校は座学だけでなく実験・実習・実技を重視しているため、実験・実習・実技に関する施設・設備が充実している傾向があります。専門学校は、職業能力を育成するため、実践的な職業教育を行うため、専門的な実習・実技のための施設・設備が充実している傾向があります。
専門学校では学ぶ分野に応じて資格が得やすいことも特徴の1つとなっています。学ぶ分野によっては、卒業と同時に資格が得られたり(測量士補、栄養士、保育士、幼稚園教諭2種など)、受験資格を得られたり(建築士(2級・木造)、自動車整備士(2級)、航空整備士(2等)、看護師、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、臨床工学技士、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師、理容師、美容師、社会保険労務士、税理士など)します。また、卒業後に一定の実務経験を積むことで、資格が得られたり(測量士、第3種電気主任技術者など)、受験資格が得られたり(2級土木施工管理技士、2級造園施工管理技士、管理栄養士、社会福祉士、精神保健福祉士など)します。
高等専門学校でも、卒業と同時に資格が得られたり、受験資格が得られたりする場合があります。
高等専門学校は卒業後の就職率が専門学校より高い傾向
2016年度に大学等(大学、短期大学、高等専門学校、専門学校(専修学校専門課程))を卒業した人について、2017年4月1日時点での就職率(就職を希望する人に対する就職した人の割合)を文部科学省・厚生労働省がサンプル調査した結果をみると、高等専門学校は100%、専門学校は96.1%となっています。
(注)2016年度卒業者の2017年4月1日時点の数値。就職率は就職希望者に対する就職者の割合です。
(出典)文部科学省・厚生労働省の平成28年度大学等卒業者の就職状況調査(大学等卒業者の就職状況調査(文部科学省発表分)・大学等卒業者の就職状況調査(厚生労働省発表分))
高等専門学校や専門学校を卒業後大学に編入学できる場合がある
高等専門学校は卒業すると大学に編入学する資格を得ることができます。また、専門学校は修業年限2年など一定の条件を満たした場合に大学に編入学する資格を得ることができます。
編入学とは、途中の年次から入学することをいいますが、編入学試験などを経て入学することになった場合には、大学3年次などから入学することになります。大学に編入学して卒業すると大学院への進学も可能となります。
高等専門学校は専攻科があり学士取得や大学院進学が可能
高等専門学校によっては本科(通常の課程)を終えた後の進学先として専攻科が設置されている場合があります。専攻科は、高等専門学校を卒業後に更に深く学び、研究するために設置されます。
高等専門学校の専攻科を卒業すると、大学を卒業後に得られる学士の学位を得られる場合があります。学士の学位は大学院(修士課程、博士課程前期)への進学の資格となるため、大学院への進学が可能となります。
通常、高等専門学校の専攻科の修業年限は学士の学位との兼ね合いもあって、大学の後半2年間に相当する2年とされます(学校教育法上は1年以上が条件)。
(出典)fromportal.comの担当者が作成
- 学校教育法第119条第1項 高等専門学校には、専攻科を置くことができる。
- 学校教育法第119条第2項 高等専門学校の専攻科は、高等専門学校を卒業した者又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者に対して、精深な程度において、特別の事項を教授し、その研究を指導することを目的とし、その修業年限は、一年以上とする。
(出典)学校教育法より引用
修業年限4年などの条件を満たすと専門学校から大学院への進学が可能
専門学校への進学者が大学院進学資格を得るためには、専門学校を修了した後に大学に編入学して卒業し学位を得る方法のほか、修業年限4年などの条件を満たした課程を修了することで大学院進学資格を得る方法があります。専門学校の課程によっては修了後にそのまま大学院に進学ができる場合もあるのです。
(出典)fromportal.comの担当者が作成
まとめ
- 高等専門学校と専門学校は同じ「専門学校」と名前がついているため似ているように感じますが、全く違うものなので注意が必要です。
- 高等専門学校は中学卒業後に進学し、専門学校は高校卒業後に進学します。高等専門学校は、小学校や中学校、高等学校、大学などと同じ「学校」に位置付けられますが、専門学校は「専修学校」の一種で専門課程を置く専修学校が専門学校と名乗ることができます。高等専門学校の修業年限は5年(一部5.5年)で、専門学校の修業年限は通常1~4年です。