大学学部と大学院(学部生と大学院生)の違い
記事作成日:2018年2月12日
大学の学部と大学院の違い、学部生と大学院生の違いについてです。大学学部と大学院の違いは、大学院の方が学歴として上位であることのほか、大学学部は勉強をするところで、大学院は研究をするところであるということが挙げられます。大学院に進学することで研究に関係する仕事に就きやすくなることがある一方、就職の選択肢が狭まってしまう場合があることに注意が必要です。ただし、理系の場合は、大学院修士課程(博士前期課程)への進学が一般的となっているため、就職の面で不利になることはあまりないとみられます。
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大学学部と大学院(学部生と大学院生)の違いの比較
大学の学部と大学院(学部生と大学院生)の違いについて比較したのが次の表となります。
区分 | 大学学部 | 大学院 |
---|---|---|
学歴(ISCED) | Level6 | Level7/8 |
目的 | 勉強 | 研究 |
就職の幅 | 広い | 狭まる傾向 |
就職時の待遇 | 標準 | やや良い |
社会に出る時期 | 22歳~ | 24歳~ |
学生生活 | 講義中心 | 研究中心で講義はゼミ形式が増える |
研究室 | 一部所属 | 所属 |
修業年限 | 4年(一部6年) | 修士2年・博士3年(一部4年) |
取得単位 | 124単位以上 | 30単位以上 |
論文 | 卒業論文は必須ではない | 修士論文(又は特定課題の研究)・博士論文必須 |
学位 | 学士 | 修士・博士 |
学歴ロンダリング | - | 学部とは別の大学に変更可能 |
(出典)学校教育法、大学設置基準、大学院設置基準を基にfromportal.comの担当者が作成
大学卒業後に大学院に進学し大学院の方が上位の学歴に
大学も大学院も高等教育が行われますが、大学を卒業後に大学院に進学するという関係になるため、大学院の方が学歴としては上位になります。なお、国際標準教育分類(ISCED)では、大学学部卒業はLevel6(学士)、大学院修士課程(博士前期課程)修了はLevel7(修士)、大学院博士課程(博士後期課程)修了はLevel8(博士)と分類されています。
大学学部は勉強で大学院は研究
大学学部と大学院の大きな違いとして、大学学部では勉強をして、大学院では研究をするということが挙げられます。勉強は既存の知識や技術を学ぶ一方、研究は未知の知識を探求することになります。大学学部は学問を教わるためにあり、大学院は学問を探求するためにあるということになります。
学校教育法では、大学は「広く知識を授ける」、「専門の学芸を教授研究」と目的が定められています。大学院は「学術の理論及び応用を教授研究」と目的が定められています。
学校教育法第83条第1項 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。
学校教育法第99条第1項 大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする。
学校教育法第99条第2項 大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする。
大学院設置基準第3条第1項 修士課程は、広い視野に立つて精深な学識を授け、専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力を培うことを目的とする。
大学院設置基準第4条第1項 博士課程は、専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的とする。
大学卒業時は就職の幅が広く大学院修了時は狭まる場合も
就職活動については大学学部を卒業した学卒の時点では、就職の選択肢が広いことが特徴です。一方で、大学院(修士課程・博士前期課程)修了時の院卒の場合には、社会に出る時期が2年遅れることもあって、就職の選択肢が狭まる場合があります。
大学院を修了することで、研究に関する能力が高まるため、大学学部の時点では入りづらかった就職先に入れるようになる、研究室と関連が深い企業などへの就職が容易になる、といったようなメリットがある場合もありますが、研究とは関連が薄い就職先の場合には学部生よりも入りづらくなることもあります。
ただし、理系の場合には、大学院の修士課程(博士前期課程)を修了することは一般的になっているため、大学院の修士課程修了が不利になることはあまりありません。文系の修士課程修了の場合には、専門分野、就職先企業の業種や職種によっては不利にならないこともありますが、不利になってしまう場合があります。
また、博士課程(博士後期課程)まで進学すると、理系・文系を問わず、一般的な就職の難易度は高まり、研究に関する仕事でないと難しくなる傾向があります。
大学院卒は大学学部卒よりも就職時の待遇は高めとなることがある
大学院卒の人(修士課程修了)は大学学部卒の人よりも2年間多く学んでいるため、就職時の待遇は2年分だけ上乗せされることがあります。そのため、大学を卒業してから2年間働いていた人と同じ程度の待遇となることが多いです。
つまり就職時点の待遇を比較すると大学卒(22歳)の給与よりも大学院卒(24歳)の給与は高くなる傾向がありますが、大学卒+2年間の社会人経験(24歳)と比較すると大学院卒(24歳)は同程度になる傾向があるということです。
ただし、日本の企業では大学院で学んだことよりも、社会人としての実務経験が評価される傾向があるため、大学学部卒+2年間の実務経験と大学院卒を比べた場合、大学学部卒+2年間の実務経験の方が評価が高くなる場合があります。
また、大学院卒の人は、研究・開発・技術などに関する部署に配属されることがあり、ゼネラリスト(幅広い業務を担当)よりも、スペシャリスト(特定の業務を担当)としてキャリアを積むこととなる場合があります。
学生生活は大学学部生は講義中心で大学院生は研究中心
大学の学部は勉強をすることが目的であることもあって、学部生の生活は講義が中心となります。もちろん、実験、実習、ゼミナール、卒業論文執筆(や研究)などもありますが、講義が中心となります。大学の学部生は研究室に所属して研究を行うこともありますが、大学の3年生、4年生などのように一部期間となることが基本です。
一方で、大学院生は研究をすることが主な目的となることもあって、研究室に所属した上で研究を行うことが学生生活の中心となります。講義も学部の場合とは異なった雰囲気となりゼミ形式が増えるなど変化します。
大学学部は4年・大学院は修士が2年で博士が3年
修業年限は大学は原則として4年となります。例外的に医学、歯学、獣医学、一部臨床関連の薬学は6年となります。大学院は修士課程あるいは博士前期課程は2年、博士後期課程は3年となります。一貫制の博士課程は5年となります。ただし例外的に、医学、歯学、獣医学、一部薬学は博士課程が4年となります(6年制の学部から進学する大学院の場合)。
大学の卒業要件・大学院の修了要件
課程を終えることについて、大学は卒業といい、大学院は修了ということが一般的です。
大学設置基準によると、大学の卒業要件は4年以上在学し124単位以上取得となっています。最低限の基準となるため、大学によっては異なる要件が設けられることがあります。また、卒業論文は必須とはなっていません。
また、医学・歯学の学科は6年以上在学し188単位以上取得すること、臨床薬学の学科は6年以上在学し186単位以上取得すること、獣医学の学科は6年以上在学し182単位以上取得することとなっています。
大学院設置基準によると、修士課程の修了要件は2年以上在学し、30単位以上を取得し、必要な研究指導を受けて、修士論文または特定の課題についての研究の成果の審査・試験に合格することとなっています。
5年間一貫制の博士課程の修了要件は5年以上在籍し、30単位以上を取得し、必要な研究指導を受けて、博士論文の審査・試験に合格することとなっています。
修士や専門職学位を有する人が博士後期課程に入学した場合には、3年以上在籍し、必要な研究指導を受けて、博士論文の審査・試験に合格することが修了要件となっていて、必要な単位数は明示されていないため、大学院がそれぞれ定めることになります。
大学を卒業すると学士・大学院を修了すると修士・博士
大学を卒業すると学士の学位が授与されます。大学院を修了すると修士課程修了の場合には修士、博士課程(博士後期課程)修了の場合には博士の学位が授与されます。
大学院で大学を変更し学歴を上書きできる
日本ではどの大学を卒業したかということが評価の対象となる場合があります。知名度が低い大学、有名でない大学よりも知名度が高い大学、有名な大学を卒業・修了した方が高く評価される場合があります。
そのため、大学の学部とは異なる大学の大学院に進学することによって最終学歴となる大学名を変更し、上書きすることができるのです。
例えば、知名度が低い大学学部から知名度が高い大学の大学院に進学するといったような形で最終学歴を上書きするのです。このように大学院への進学時点で、大学を変更することを学歴ロンダリングを呼ぶことがあります。
まとめ
- 大学学部と大学院の違いは、大学院の方が学歴として上位であることのほか、大学学部は勉強をするところで、大学院は研究をするところであるということが挙げられます。
- 大学院に進学すると研究に関連する仕事に就きやすくなる一方で、研究とは関連が薄い仕事については就職の選択肢が狭まってしまうことがあることに注意が必要です。