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債券のキャリーとは

記事作成日:2017年10月4日
最終更新日:2021年11月3日

債券のキャリーとは

債券投資ではよくキャリーという言葉を用いることがありますが、資産運用・投資の場面でキャリーとは資産を保有しているだけで得られるリターンのことを意味します。キャリーは英語のcarryから来ていますが、持って運ぶ、身に付けて運ぶという意味があります。

なお、似た言葉にキャリートレード、円キャリー取引、といった言葉がありますが、キャリートレードとは金利が低い資産で資金調達を行い、金利が高い資産に投資する取引形態のことをいいます。例えば、円キャリートレードは、金利が低い日本円で資金を借りて、円を売ってドルを購入し、金利が高いドル資産に投資を行うという投資方法です。ここでは、保有しているだけで得られるリターンの意味のキャリーについて説明しています。

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キャリーとは

キャリーとは、市場における資産価格等(金利も含む)の変化がなかったと仮定した場合に、資産を保有しているだけで得られるリターンのことをいいます。

債券のキャリーには、金利やイールドカーブの変化によるリターン以外の債券のクーポン収入、償還金額(額面金額)と購入金額の差額の償却分が含まれます(償還差損・償還差益)。

なお、キャリーという言葉を用いる場合にロールダウン効果を含める場合もあります。ロールダウンを含めているのか、含めていないのかは文脈などから読み取る必要がありますが、「キャリー」という言葉は発する人によって微妙に意味が違うことに注意が必要です。

一般的にはキャリーといった場合はロールダウン効果を含めない場合が多いようです。ロールダウン効果を含めずロールダウン効果は別物として扱う場合、キャリー・ロールダウン(CaRD)のようにキャリーとロールダウンを別々に分けて扱います。

キャリーにロールダウン効果を含めない場合

  • クーポン収入
  • 償還金額(額面金額)と購入金額の差額(償還差損・償還差益)

キャリーにロールダウン効果を含める場合

  • クーポン収入
  • 償還金額(額面金額)と購入金額の差額(償還差損・償還差益)
  • ロールダウン効果

債券のキャリーの構成要素

債券のキャリーの構成要素である、クーポン収入、償還金額(額面金額)と購入金額の差額(償還差損・償還差益)、ロールダウン効果について見てみます。

クーポン収入

国債や社債には割引債(ゼロクーポン債)のようなクーポン(利息)の支払いがない債券でなければ、一定期間ごとにクーポン(利息)が支払われます。債券は保有しているとクーポンによる収入が得られます。株式の配当金や株主優待のようなものです。

償還金額(額面金額)と購入金額の差額(償還差損・償還差益)

債券には額面金額があり、満期まで持ち切った場合、額面金額が償還されます(支払われます)。そのため購入金額と額面金額に差がある場合は利益となりますが、保有期間に応じて発生したと考えることができます。

債券には償還差益・償還差損がある

債券には通常満期があり、満期には額面金額が償還されます。例えば額面金額が100円であれば、満期まで保有していた場合には100円が支払われます。この債券の購入価格が95円であった場合には、満期まで保有すれば、購入金額と額面金額の差である5円(100-95=5)が差益(償還差益)となります。

償還差益・差損は時間の経過に伴って債券価格に反映される

そして、償還差損や償還差益は満期までの間に債券価格に反映されていくため、満期まで保有しなくても価格変化の影響を受けます。例えばクーポンがない割引債で、発行金額が95.15円、額面が100円、5年後に満期となる国債があったとします。

複利計算で発行時の最終利回りを計算すると1.0%となります。仮に市場での金利変化が一切なく、イールドカーブが完全にフラットでロールダウン効果が全くないと仮定すると、価格は以下の様に変化します。

最終利回り、すなわち市場での取引の金利が全く変化していませんが、債券の満期までの期間、残存期間が短くなることによって価格は上昇しています。この例は償還差益の例ですが、償還差益・償還差損ともに満期までの間に債券価格に織り込まれていきます。

利回りが変わらない時の時間経過による債券価格の変化(額面100円)
時点価格(円)最終利回り(複利)
発行時95.151.0%
1年後96.101.0%
2年後97.061.0%
3年後98.031.0%
4年後99.011.0%
満期(5年後)100.00-

(出典)fromportal.comの担当者が作成

債券は保有するだけで時間経過に伴う償還差益・差損の影響がある

債券は保有していると、満期までの期間が短くなる時間経過に伴う償還差益・差損の織り込みによる債券価格の変化があります(なお、イールドカーブに傾きがある場合、後述のロールダウン効果も発生します)。償還差損・償還差益の織り込み(償却)分は、債券を保有しているだけで発生するリターンなので、キャリーとなります。ただし、この場合はプラスのリターンになるとは限らず、マイナスのリターンとなる可能性があります。

ロールダウン効果

債券のロールダウン効果とは、イールドカーブが右上がりの場合に時間の経過に伴って利回りが低下することによって債券価格が上昇する効果のことです。キャリーにはロールダウン効果を含めない場合と含める場合の両方があります。

上記の債券の償還差益・差損の例では、イールドカーブが完全にフラットで時間が経過しても債券の利回りが変化しないという前提でしたが、通常はイールドカーブが完全にフラットということはなく、残存期間が短いほど利回りは低く、残存期間が長いほど利回りは高いという、右肩上がりの順イールドの傾向があります。

順イールドのイールドカーブでは、残存期間が短くなると、利回り(金利)が低下します。利回り(金利)が低下すると債券価格は上昇するため、償還差益・差損の織り込み分に加えて、保有しているだけで発生した金利低下によるリターンが得られます。

ロールダウン効果は、金利変化によるリターンですが、市場の金利の変化によるリターンではなく、債券を保有しているだけで得られるリターンなのでキャリーとなります。ただし、ロールダウン効果はプラスとは限らず、イールドカーブが右肩下がりの場合の逆イールドでは、マイナスリターンとなることがあります。

順イールドとロールダウン効果

参考:ロールダウン効果

債券のリターンを支えるロールダウン効果とは

債券のキャリー効果の計算方法

債券のキャリー効果には、クーポン、満期までの期間が短くなることによる価格変化(償還差損・償還差益)、ロールダウン効果が含まれます。

このうち、クーポンと満期までの期間が短くなることによる価格変化(償還差損・償還差益)は最終利回りだけのリターンとなります。最終利回りは、満期までのクーポンと購入価格と額面金額の差(償還差損・償還差益)を考慮して計算されるからです。

ロールダウン効果は、各年限別の最終利回りが分かるのであれば、-(時間の経過による利回りの低下(%))×(修正デュレーション(あるいは実効デュレーション))で計算できます。これは(債券の価格変化率(%))=-(利回り変化(%))×(修正デュレーション)の推計式を利用したものです。

まとめると、債券のキャリー効果は「最終利回り+ロールダウン効果」で計算でき、ロールダウン効果(%)は「-(時間の経過による利回りの低下(%))×(修正デュレーション)」で計算できます。

まとめ

  • キャリーとは、市場における価格変化(金利変化)が全くなかったとして、資産を保有しているだけで得られるリターンを意味します。
  • 債券のキャリーには、クーポンによる収入、満期までの期間が短くなることによる価格変化(償還差損・償還差益)が含まれます。ロールダウン効果をキャリーに含める場合もあります(含めない場合もあります)。

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【債券のキャリーとはの記事は終わりです】

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