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金価格の変動要因(上昇・下落要因)

記事作成日:2017年8月27日
最終更新日:2022年1月9日

金価格の変動要因(上昇・下落要因)

金価格の変動要因(上昇・下落要因)についてです。金価格は米ドルと逆の動きをする傾向があるほか、金利が上昇すると金価格は下落し、金利が低下すると金価格は上昇する傾向があります。また、金は安全資産とされているため、投資家マインドが悪化する局面で買われやすい傾向があります。株価が下落する場合にも金に需要が集まる場合があります。

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金価格の変動要因(上昇・下落要因)

金価格の変動要因(上昇・下落要因)についてまとめたものが次の表です。次項以降で各要因について見ていきます。

金価格の変動要因(上昇・下落要因)
変動要因金価格への影響
米ドル上昇↓下落
下落↑上昇
金利上昇↓下落
低下↑上昇
金融政策緩和↑上昇
引き締め↓下落
産出コスト上昇↑上昇
低下↓下落
物価上昇↑上昇
下落↓下落
景気回復↓下落
後退↑上昇
株価上昇↓下落
下落↑上昇
投資家心理リスク選好↓下落
リスク回避↑上昇
金需要多い↑上昇
少ない↓下落
金供給多い↓下落
少ない↑上昇

(備考)各要因は価格に上記とは異なる影響を与える場合があります。

ドル

米ドルと金価格の動きは逆相関となることがあります。米ドルが上昇すると米ドル以外の通貨から見てドル建ての金価格が割高となるため買い需要が後退し金価格の下落要因となります。逆に米ドルが下落すると米ドル以外の通貨から見てドル建ての金価格が割安となるため買い需要が高まり金価格の上昇要因となります。

また、米ドルと金はともに資産としての信頼性が高く代替関係にあることから、米ドルの需要が強まると金の需要が弱まり金価格の下落要因となる一方、米ドルの需要が弱まると金の需要が高まり金価格の上昇要因となります。

参考:ドルと金の関係

米ドルと金価格は逆方向に動きやすい関係

金利

金は持っているだけで利子が付くというようなことはなく(金を取り扱う業者が特典としてつけるような場合を除く)、価格が変化することで利益を上げることになります。インカムゲインがなく、キャピタルゲインだけの資産なのです。

そのため、金利(債券利回り)が上昇すると、利子・利息が付かない金と比べて、債券の魅力が相対的に高まります。そのため、金利が上昇すると金に対する投資意欲が後退し、金価格の下落要因となります。

金利(債券利回り)が低下すると、利子・利息が付かない金であっても、債券に対して金の魅力が相対的に高まります。そのため、金利が低下すると金に対する投資意欲が高まり、金価格の上昇要因となります。

金融政策

金利が金価格に影響を与えるため、金融政策の動向も金価格に影響を与えることになります。

金融引き締め(政策金利の引き上げ(利上げ)、量的金融緩和の縮小・解除)が行われると金利が上昇するため金価格の下落要因となることがあります。金融緩和(政策金利の引き下げ(利下げ)、量的金融緩和の開始・拡大)が行われると金利が低下するため金価格の上昇要因となることがあります。

米国の金融政策の場合にはドルに影響を与えますが、米国の金融政策が引き締められる場合には米国金利と米ドルの上昇から金価格の下落要因となります。逆に米国の金融政策が緩和される場合には米国金利の低下と米ドルの下落から金価格の上昇要因となります。

産出コスト(供給コスト)

金の産出コスト(供給コスト)の増大によって金の価格水準が押し上げられることがあります。投資家は、金価格が金の産出コスト以下になると金の産出で採算が取れなくなり、金の供給が減少するだろうと考えるため、金価格の下値の目途として金の産出コスト(供給コスト)を意識します。

そのため、金の供給コストが上昇すると、金価格の価格水準も押し上げられることになります。産出コスト(供給コスト)は人件費や物価の上昇から基本的に増加することになりますが、技術革新などによって減少した場合には、金価格の押し下げ要因になります。

物価

物価が上昇するということは、お金(通貨)の価値が相対的に下落し、実物資産の価値が相対的に上がるということです。金は実物資産ですので、物価が上昇する時には価値が上昇します。つまり、物価上昇時には金価格は上昇する傾向があります。

また、金は産出コストがかかりますが、物価が上昇すると産出コストが上昇することから、物価上昇によって金価格は押し上げられることになります。

逆に物価が下落するということは、お金(通貨)の価値が相対的に上昇し、実物資産の価値が相対的に下がるということです。金は実物資産ですから、物価が下落すると価値が下落します。つまり、物価下落時には金価格は下落する傾向があります。

また、金の産出コストの面からも物価が下落すると、産出コスト減少を通じて金価格の押し下げ要因となります。

景気

景気が良い時には、経済・企業業績の改善などから株価の上昇が見込まれ、安全資産である金よりも相対的に株式などリスク性資産の魅力が高まることから、金価格は弱くなりやすい傾向があります。

景気が悪い時には、企業業績への期待ができないため株価の下落が見込まれ、株式などリスク性資産に対して相対的に安全資産である金の魅力が高まり、金価格が上昇しやすくなります。

株価

株価は投資家心理を反映して変動します。株価が上昇する時は投資家マインドがリスク選好的であるため、安全資産である金よりもリスク資産である株式などへの投資意欲が高まるため、金が弱くなる要因となることがあります。

株価が下落する場合には投資家心理がリスク回避的であって、安全資産である金への投資意欲が高まるため、金価格の上昇要因となることがあります。

投資家心理

金は安全資産とされ投資家のマインドが悪化し、リスク回避姿勢が高まった時に需要が高まる傾向があります。投資家心理が好転し、リスク選好(リスクオン)姿勢になると金需要が弱まり、金価格の下落要因となります。

一方、投資家心理が悪化しリスク回避(リスクオフ)姿勢になると金需要が強まり、金価格の上昇要因となります。

需給動向

金は市場で取引されて価格が形成されるため金の需給動向も金価格に影響します。金に対する需要が強まる場合や、供給が少なくなる場合には、金を買う動きが優勢となるため、金価格の上昇要因となります。需要>供給の状態です。

逆に金に対する需要が弱まる場合や、供給が多くなる場合には、金を売る動きが優勢となるため、金価格の下落要因となります。需要<供給の状態です。

金価格の上昇要因となる需給動向

  • ストライキの発生(供給の減少)
  • 産出コストの増大(供給の減少)
  • 金鉱山の枯渇(供給の減少)
  • 宝飾需要の増大(需要の増加)
  • 産業需要の増大(需要の増加)
  • 中央銀行の保有増加(需要の増加)
  • 安全資産需要の高まり(需要の増加)
  • 投資対象としての需要(需要の増加)

金価格の下落要因となる需給動向

  • スクラップからの回収増加(供給の増加)
  • 金保有主体の大量放出(供給の増加)

金の供給に影響する要因

金の供給には、主に金鉱山からの産出による供給(新産金)と、貴金属のスクラップからの回収による供給(いわゆる都市鉱山からの回収)があります。金の供給に影響を与える原因には次のようなものがあります。

労働争議・ストライキ

金鉱山の採掘現場で労働者のストライキ、労働争議が発生すると、金の産出が減少するため、供給が減少する要因になります。金を算出する国で大規模なストライキが発生し、金の供給に影響を与えるような場合には、金価格の上昇要因になります。ストライキなどが結果的に鉱山労働者の賃金の上昇に結びつき、産出コストが増加する場合があります。

産出コストの増大

金の産出コストが増大し過ぎると、鉱山会社が金の産出によって得られる利益が減少するため、産出を見送ったり、鉱山を閉山したりして、供給が減少する要因となることがあります。金価格と金の産出コストの関係は供給に影響を与える可能性があります。産出コストが増大する要因としては賃金や輸送コストの上昇が挙げられます。

金価格の大幅な下落

金価格が大幅に下落して、金の産出コストの水準に近づくと、鉱山会社などが金を産出しても得られる利益が減少するため、供給が減少する要因となることがあります。鉱山には採掘環境や輸送環境などから採算が良い鉱山と採算が悪い鉱山があり鉱山によって金価格の影響は異なります。

金鉱山の枯渇

金は限りある有限の資源です。金鉱山での採掘が進み、埋蔵量が少なくなると、金の産出がほとんどなくなる、あるいは産出に多大な労力を要するようになってしまい採算にあうコストでは産出が難しくなることがあります。金鉱山の枯渇によって、その金鉱山からの産出が行われなくなれば、供給が減少する要因となります。

スクラップからの回収

リサイクルに対する意識が高まるような場合、リサイクルのシステムが整備されるような場合に、貴金属のスクラップから金回収が増加する場合には金の供給が増加する要因になります。金は鉱山からの産出だけではなく、宝飾品や精密機械など貴金属が含まれるスクラップからの回収が増えていて、金の重要な供給元となっています。

金保有主体の放出

金を大量に保有している主体が大量に金を放出するような場合には、供給が増加する要因となります。IMF(国際通貨基金)や中央銀行などの公的な機関の放出や民間の主体の放出が考えられます。

金の需要に影響する要因

金の需要には、宝飾用の需要、産業用の需要(工業用・歯科用)、中央銀行による外貨準備としての需要、地金・コインとしての需要、投資対象としての需要(ETFの機関投資家などによる購入)があります。金の需要に影響を与える原因には次のようなものがあります。

所得増大による宝飾用需要の増加

金を宝飾用として利用する場合、宝飾品は生活必需品ではないため、所得が少ない場合は需要があまりありません。しかし、所得が多くなると宝飾品を購入するゆとりができるため、需要が増えることになります。

金の宝飾品需要が大きい国としてインドや中国が知られていますが、国の経済が発展して国民所得が増えると、お金に余裕ができて宝飾品への需要が高まることがあります。

産業用需要の増加

金は工業向けの用途や歯科向けの用途として用いられる需要もあります。技術の進展や産業の発展などによって産業用の金需要が高まることがあります。

中央銀行による外貨準備の増加

中央銀行は金融システムの安定のため外貨準備を積み立てていますが、外貨準備にはドルなどの主要通貨のほか、金も利用されます。

中央銀行が外貨準備を増やす場合や、信頼が揺らぐなどの理由でドルの代わりの外貨準備を求める場合には、中央銀行による金需要が高まることがあります。逆にドルの魅力が高まれば、金の需要が減る場合があります。

安全資産としての需要

地域紛争や大規模なテロ活動など有事の際、いわゆる地政学リスクが高まるような場合や、2008年の世界金融危機(リーマンショック)や2010年前後の欧州債務危機(ソブリン危機)などよってリスク性資産の価格下落リスクが高まる場合などにおいて、投資家がリスク回避的な投資行動をとります。

投資家は資金をできるだけ安全な資産に移そうとしますが、資金の逃避先として実物資産であって価値への信頼性が高い金の需要が高まることがあります。

投資対象としての需要

投資家が分散投資のために価格変動の特性が異なる資産を組み入れようとする場合などに投資対象として金の需要が高まることがあります。

金価格に連動する金ETF(上場投資信託)の組成が活発になると、自らの投資対象に金ETFを組み入れる動きが広がりました。金は株式などのリスク性資産とは異なった値動きをするため、分散投資のために組み入れられることがあります。

まとめ

  • 金価格の変動要因には、米ドル、金利、産出コスト、物価、株価、投資家心理、需要や供給などが挙げられます。
  • 金は安全資産であるため、リスク回避局面は上昇要因となり、リスク選好局面は下落要因となります。また、物価が上昇すると、金価格の上昇要因となり、物価が下落すると金価格の下落要因となります。

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【金価格の変動要因(上昇・下落要因)の記事は終わりです】

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