車両保険とは
記事作成日:2015年7月10日
最終更新日:2017年5月1日
自分側のモノ(車)の損害を補償する車両保険について説明しています。対人賠償責任保険、対物賠償責任保険、人身傷害保険などと比較すると、自分のモノに対する補償なので優先度は下がります。自動車ローンがある場合などは車両保険に加入した方が安心です。しかし、状況によっては加入しないという選択肢もあり、自動車保険料を節約する際の重要なポイントにもなります。
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車両保険とは
車両保険とは、契約している自動車が車との衝突や接触、火災や洪水、盗難、単独事故などによって損害が生じた時に保険金額を上限として保険金が支払われる保険です。
車両保険の保険金額
車両保険の保険金額は契約時に保険会社と協定した協定保険価額になります。
通常の車両保険では車両価額協定保険特約が付いており、車両保険金額は協定保険価額となります。協定保険価額は保険会社が自動車の車名、型式、仕様、登録年数などから市場販売価格相当額を考慮して定めた標準価格表に基づいて保険会社と契約者が契約締結時に協定して定めます。
協定保険価額を定めることで個々の自動車の事故時の時価に関係なく協定保険価額が車両保険金額となり、保険金額(協定保険価額)を上限に保険金が支払われます。
車両保険で支払われる保険金
全損時には保険金額が保険金として支払われます。分損時には損害額(修理費)から免責金額を差し引いて保険金が支払われます。
全損とは、車の修理ができないような場合、車の修理費が保険金額(協定保険価額)以上になってしまった場合、盗難されて発見されンかあった場合です。
分損とは、全損でない場合で、保険金額以下の修理費となる場合です。
保険によっては損害防止費用、請求権保全・行使手続費用、車両運搬費用、盗難車引取費用などの費用を損害の一部とみなして事故の損害とこれら費用が保険金額を超える時でもこれらの費用を全額支払うとしている場合もあります。
車両保険の補償対象となる損害
車両保険の補償対象となる損害は次のとおりです。
- 他の車との衝突や接触による損害
- 火災や爆発による損害
- 台風・竜巻・洪水・高潮による損害
- 落書きやいたずらによる損害
- 物の飛来や落下による損害
- 盗難による損害
- 電柱への衝突や接触など単独事故による損害
- 自転車との衝突や接触による損害
- 墜落や転覆による損害
- 当て逃げ(相手が不明)による損害
車両保険の補償対象とならない損害
次の損害は車両保険の補償対象となりません。特に地震、噴火、津波による損害や核燃料物質や放射能汚染などによる損害が保障されないことに注意しましょう。大きな地震が起きた場合の地震や津波による損害、火山の噴火による損害、原子力発電所の事故による放射能汚染の損害は補償対象外です。ただし、地震、噴火、津波による損害は特約で補償対象とすることができる場合があります。
詳しくは地震噴火津波の車両の損害を補償する特約をご覧ください。
- 保険契約者などの故意や重大な過失による損害
- 戦争、外国の武力行使、革命、内乱、武装反乱や暴動による損害
- 地震、噴火、津波による損害
- 核燃料物質や放射能汚染などによる損害
- 詐欺又は横領による損害
- 競技や曲技のため使用したことによる損害
車両保険は補償範囲を変更できる
保険会社によっても異なりますが、車両保険では補償範囲を変更することができます。車両保険で補償対象となる損害を全て補償する「一般条件」タイプと補償範囲を狭めた「車対車+A」タイプや「車対車」タイプがあります。補償範囲を狭めたタイプはエコノミーなどと呼ばれることもあります。補償範囲が狭いほど保険料は安くなります。保険会社によって補償範囲や名称は異なりますので注意しましょう。
「車対車」は文字通り車と車の衝突や接触事故に限定して補償します。「車対車+A」とは車対車の事故と「A」を補償しますが、AはAccidentを指していて偶然の事故を補償します。「車対車+A」で補償されるのは車対車の事故のほか、火災・水災、落書き・いたずら、物の飛来や落下、盗難などが補償されます。
損害 | 一般条件 | 車対車+A | 車対車 |
---|---|---|---|
車対車の事故 | ○ | ○ | ○ |
火災・水災 | ○ | ○ | × |
落書き・いたずら | ○ | ○ | × |
物の飛来や落下 | ○ | ○ | × |
盗難 | ○ | ○ | × |
自損事故 | ○ | × | × |
当て逃げ | ○ | × | × |
(注)自転車との衝突や接触を単独事故と同様に扱い補償範囲が限定されているタイプで補償対象外としている場合があります。保険会社によって異なる場合があります。
車両保険では免責金額を設定できる
車両保険では免責金額を設定できます。免責金額とは保険金が支払われる際に差し引かれる金額で、自己負担額のことです。全損の場合は免責金額は差し引かれません。
設定方法は保険会社によって異なりますが、免責金額は「0-0万円」、「0-5万円」、「0-10万円」、「5-10万円」、「10-10万円」などの設定方法があります。左側の数字が1回目の事故の免責金額を示していて、右側の後ろの数字が2回目以降の事故の免責金額を示しています。車対車の事故だけを免責金額をゼロ円とするような設定ができる場合があります。
車両保険のメリット
自動車ローンがある場合安心できる
自動車ローンを抱えている時には車両保険があれば、全損時でも保険金で自動車ローンを返済できるので安心です。車両保険がないと自動車ローンだけが残るという悲しい状態になります。車両保険の保険金額は自動車ローンの残高を踏まえて考えると良いでしょう。
過失割合や相手の賠償能力に関係なく修理できる
車両保険では過失割合や相手の賠償能力の有無に関わらず保険金が支払われるため、比較的早く自動車を修理することができます。車両保険がなければ相手からは過失割合分しか損害は補償されず、支払うお金がなければ泣き寝入りとなりかねません。
なお、重大な過失がある場合は車両保険の保険金が支払われないこともあるので注意しましょう。
示談前に保険会社が立て替えて支払ってくれる
車両保険では相手がある車対車の事故の場合、示談が成立する前でも相手の過失分も含めて保険会社が保険金を支払ってくれるため、示談交渉に左右されることがありません。保険会社が立て替えた分は保険会社が相手から回収します。
車両保険のデメリット
車両保険を使うと等級が下がる
車両保険を使うと自動車保険の等級が下がります。しかも、事故有係数が適用されるので保険料がかなり上がってしまいます。少額の損害であれば車両保険を使わない方が安上がりな場合もあるので、気軽には使いづらいという面があります。
車両保険の分保険料が高くなる
車両保険は保険料がかかります。車両保険がある分保険料が高くなるため、家計を圧迫する恐れがあります。
車両保険に加入した方が良い場合
自動車ローンがある場合
車両保険は自分の物に対する補償なので、他の対人賠償責任保険、対物賠償責任保険、人身傷害保険など比べると優先度は下がりますが、是非つけておいた方がよい場合があります。それは自動車ローンで車を購入している場合で、自動車ローンの残高が比較的多い時です。
自動車ローンを一括で返せるほど貯金があるなら別ですが、自動車事故で車が全損になってしまった場合は、車両保険に入っていないとローンだけが残ってしまうことになります。車両保険があれば残ったローンの返済も可能です。
車両保険に加入しなくても良い場合
登録から年数が経っている場合
自動車に乗っている年数が長くなっている場合、設定できる車両保険の保険金額が低くなる場合があります。その場合には車両保険の効果が低下してしまいますので、敢えてつけないで貯金で対応するという考え方もできます。
十分な貯金がある場合
自動車事故が発生した場合でも、自分の車を修理したり、買い替えたりできるだけの十分な貯金があれば車両保険は不要です。対人賠償責任や対物賠償責任などの賠償責任は高額となる可能性がありますが、車両の修理費用や買い替え費用はおおよその限度が分かりますし、対人や対物の賠償責任ほどは高額とならないためです。
自動車ローンがない場合
車両保険は自動車ローンがある場合につけていることも多いようです。自動車ローンがない人は、自動車ローンがある人よりも車両保険の必要性は下がります。
まとめ
- 車両保険とは、車対車の事故、火災や水災、盗難、自損事故などによって損害が生じた時に保険金が支払われる保険です。
- 自動車ローンがある場合などは車両保険に加入した方が安心です。