保険料が還付される医療保険の注意点
記事作成日:2015年6月19日
最終更新日:2015年7月5日
医療保険の中には、一定の年齢の時点で、一定の金額(支払った保険料)から保険事故に該当(入院など)して給付を受けた金額が差し引かれた金額が還付される仕組みを持った保険があります。
支払った保険料が戻ってくることから、掛け捨て保険とは違って、お金がもったいなくないと思うかもしれませんが、この保険の仕組みは普通の保険とは大きく違っていて相当な注意が必要です。
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受け取る還付金の例
例えば支払った保険料から受け取った給付金を差し引いてお金が支払われる場合、保険事故に該当するほど損をする場合があります。
単純化して保険料を100万円支払っていて、保険給付金を全く受け取らなかった(0万円)場合と、80万円受け取った場合を考えます。
受け取らなかった場合は100-0=100万円のお金が戻ってきます。80万円の保険給付金を受け取った場合は100-80=20万円のお金が戻ってきます。ただ、80万円の給付金があるので、20+80=100万円を受け取っているのと同じことです。
なお、一部でも早く受け取ったお金があれば、その分時間的価値を考慮することができるため、完全に同じではありません。
保険事故の有無は関係ない
何かおかしなことに気づきませんか?支払った保険料から受け取った給付金を差し引いてお金が支払われる仕組みでは、保険事故にあっても、あわなくても受け取る時点は違いますが、受け取る金額は変わりません。(注)時間的価値により金利が上昇した場合や物価の大きな変動があった場合は実質的価値は変わりえます。
普通の保険と違う仕組み
保険の基本的な仕組みは、保険料を広く集めて保険事故に合ってしまった人にまとまった保険金を渡すことで被害を軽減することです。この80万円を受け取った人は、通常の医療保険なら保険に入っていたことで保険事故にあった分、保険からはお金をもらい保険事故にあわなかった人よりは多くのお金をもらえるはずです。
しかし、受け取った給付金が差し引かれてお金が支払われる仕組みでは、保険事故にあっても、保険事故にあわなかった人よりも多くのお金をもらえるわけではないのです。
そのため、この仕組みの部分は通常の保険の姿とは異なったものであるということに気を付ける必要があります。
事実上保険を使って貯蓄している
保険事故にあってもあわなくても、同じ金額しか戻ってこないのであれば、保険という名前がついていても保険事故があったか、なかったかはもらうお金に影響しておらず、事実上保険を使って貯蓄をしていることに他なりません。そして、保険で貯蓄をすることには「保険で貯蓄を行ってはいけない理由」で説明していますが、問題点もあります。最も問題が大きい部分は長期に資金を拘束してしまうことです。
途中解約するか死亡と損をする点にも注意
還付金が支払われるより前に解約した場合、解約返戻金が支払われますが払い込んだ保険料よりも少額となるため、通常損をしてしまいます。(解約前に保険金の支払いを受けていれば損しない場合もあります。)そのため、保険の見直しを躊躇してしまう可能性があります。また家計が苦しくなり保険料を支払えなくなった場合も同様です。また、還付金が支払われる前に死亡してしまうと還付金を受け取ることができず、解約返戻金を受け取ることになりますが途中解約と同じことなので損をします。
終身払いである場合の注意点
保険料が終身払いの場合、還付金が支払われた時点で解約すればまだ良いかもしれません。しかし、還付金を受け取った後も契約を続けると貯蓄部分があるため通常より上乗せされた割高な保険料を支払い続けることになります。
無事故でお金が支払われる保険も似たような仕組み
一定期間、保険事故がなかった場合(無事故)に何らかの形でお金が支払われる仕組みを持った保険も同じようなことが言えます。保険事故にあった人とあってない人がもらう金額は同額ではありませんが、保険事故にあうことでもらえなくなるお金があります。
掛け捨ては損ではない
保険事故が発生する以外で、支払った保険料が戻ってこないいわゆる掛け捨ての保険と何らかの形で戻ってくる貯蓄型の保険がありますが、「掛け捨て保険は積み立て・貯蓄型より損?」で説明しているとおり、保障部分は同じ保障内容であれば保険料に大きな差は生じません。
そのため、掛け捨てが損だということはなく、貯蓄部分があるかないかの違いなのです。貯蓄型の保険でも保障部分は保障に使われます。保険料が戻ってくることにこだわる必要はありません。保険料が戻ってくるような仕組みは保険料がその分高くなります。
まとめ
- 医療保険で一定の時点で支払った保険料に相当する金額がが給付を受けた金額を除いて支払われる仕組みの保険は普通の保険と仕組みが異なっています。また途中解約は通常損をします。
- 保険事故にあってもあわなくてももらえるお金は変わらないのであれば、保険と使って貯蓄をしていることと同じになります。
- 掛け捨て保険は損ではありません。還付金などでお金が戻る保険以外の保険も検討してみましょう。