入籍や氏を変更する手続き(入籍届とは)
記事作成日:2015年10月26日
最終更新日:2018年12月7日
入籍とは、広い意味ではある人が戸籍に入ることを指します。反対の意味があるのは除籍で戸籍から除かれることです。入籍を広い意味で捉えるならば、出生によって戸籍がなかった人が新たに戸籍に入ることや、結婚(婚姻)や養子縁組によってある戸籍から別の戸籍に入ることが入籍となります。婚姻の場合は、初婚同士の場合で夫婦がともに親の戸籍に入ったままで筆頭者でない場合には、新たな戸籍を編製することになり、夫婦はこの戸籍に入ります。新たな戸籍が作られることに着目して入籍と区別するような場合があります。
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入籍届とは
入籍届とは、子が父や母の戸籍に入る場合や子が父母の氏、父あるいは母の氏を称するために必要となる届出とされています。婚姻届など他の手続きがある場合は入籍届は用いられません。お役所的には、婚姻の時に出すのは入籍届ではなく婚姻届です。良く、結婚することを入籍するというので、入籍届というイメージがあると思いますが、実は婚姻届というのが正しいのです。もちろん、結婚する時に役所の窓口で入籍したいので入籍届を出しますといっても、意図を確認するでしょうから婚姻届を書くことを説明してくれると思います。結婚の場合は次の記事で詳しく説明しています。戸籍の手続き上では入籍=結婚だけとは限らないのです。
戸籍法は第12節入籍
の第98条と第99条で入籍について定めています。
戸籍法第98条第1項 民法第791条第1項から第3項までの規定によつて父又は母の氏を称しようとする者は、その父又は母の氏名及び本籍を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
戸籍法第99条第1項 民法第791条第4項の規定によつて従前の氏に復しようとする者は、同条第1項から第3項までの規定によつて氏を改めた年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
(出典)戸籍法より引用
入籍届が必要となる場合には具体的には次のようなものがあります。
子が父または母と氏が異なる場合
何らかの事情によって子が父または母と氏が異なる場合には入籍届の手続きが関係します。夫婦が離婚した場合や子を認知した場合、養子縁組をしない連れ子の場合が考えられます。
戸籍法第98条第1項 民法第791条第1項から第3項までの規定によつて父又は母の氏を称しようとする者は、その父又は母の氏名及び本籍を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
民法第791条第1項 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
夫婦が離婚した場合
夫婦が離婚した場合には、夫婦のうち筆頭者の戸籍に変動はありませんが、夫婦の筆頭者でない側は離婚により戸籍から離れます。そして、夫婦に子供がいた場合も離婚届を提出するだけでは戸籍に変動がありません。戸籍から離れた側が子供を自分の戸籍に入れたい場合は、入籍の届けが必要となります。ただし、この場合も子供の氏は元のままなので、原則として家庭裁判所の許可を受けてから入籍届をすることになります。入籍届により子は母の氏を称することになり、母の戸籍に入ることになります。
子を認知した場合
婚姻していない母が産んだ子供を、父が認知しても認知届では子の戸籍は動きません。そのため、父親が自分の戸籍に入れたいと思った場合は、入籍届が必要になります。ただし、子供は母の氏を称しています。そのため、戸籍に子を入れるためには、子の氏を父の氏に変更することになりますが、この場合は家庭裁判所の許可を受けてから、入籍届を提出することになります。
養子縁組をしない連れ子の場合
離婚歴があって子がいる人が、婚姻したことによって離婚相手とは別の再婚相手の戸籍に入る場合で、子の養子縁組を行わない場合、婚姻によっては子の戸籍が動かないため、子を再婚後の戸籍に入れる場合にも入籍届が必要となります。この場合、家庭裁判所の許可を得た上で入籍届を提出することになります。
子の氏が父母の氏と異なる場合
父または母が氏を改めたことによって子の氏が父母の氏と異なってしまった場合は入籍届により子は父母の氏を称することができます。具体的には、子がある離婚した父母が再婚した場合、認知準正・婚姻準正の場合、子がある父母が養子となった場合などがあります。
戸籍法第98条第1項 民法第791条第1項から第3項までの規定によつて父又は母の氏を称しようとする者は、その父又は母の氏名及び本籍を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
戸籍法第98条第2項 民法第791条第2項の規定によつて父母の氏を称しようとする者に配偶者がある場合には、配偶者とともに届け出なければならない。
民法第791条第2項 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
民法第791条第3項 子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
子がある離婚した父母が再婚した場合
子がある離婚した父母が同じ相手と再婚した場合にも入籍届が想定されます。父母の婚姻中に子が生まれ、離婚により母が父の戸籍から抜けた後、家庭裁判所の許可と入籍届で子が母の戸籍に入ったとします。その後母が父と再婚し、父の戸籍に入った場合には、子の氏は母の前の氏のままのため、父母が婚姻中は家庭裁判所の許可なく入籍届により、父母の氏に変更できます。
認知準正・婚姻準正の場合
未婚の母が出産し、父と母が婚姻した後に父が子を認知すると認知準正、父が認知した後に父母が婚姻すると婚姻準正となりますが、どちらの場合も子の氏は母のままです。婚姻で母が氏を父の氏に変更している場合は、子と父母の氏が違っているため、入籍届により氏を父母の氏に変更できますが、この場合家庭裁判所の許可なく入籍届が提出できます。
子がある父母が養子となった場合
子がある父母が養子縁組により別の氏を称することになっても、子の氏は変わりません。この場合、子が父母と同じ氏を名乗りたい場合は入籍届を提出することが必要となりますが、家庭裁判所の許可は不要です。
未成年が氏を変更し成年になってから氏を戻す場合
子が父または母と氏が異なる場合や子の氏が父母の氏と異なる場合で子が氏を変更した時に未成年だった場合、成年に達した時から1年以内に入籍届を提出すると、変更前の氏に戻ることができます。
戸籍法第99条第1項 民法第791条第4項の規定によつて従前の氏に復しようとする者は、同条第1項から第3項までの規定によつて氏を改めた年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
戸籍法第99条第2項 前項の者に配偶者がある場合には、配偶者とともに届け出なければならない。
民法第791条第4項 前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。
まとめ
- 入籍とは戸籍に入ることです。入籍の反対に戸籍から除かれるのは除籍です。
- 入籍届とは、子が父や母の戸籍に入る場合や子が父母の氏、父あるいは母の氏を称するために必要となる届出とされています。
- 結婚(婚姻)する時は婚姻届を出すのであって、入籍届を出すのではありません。