金が安全資産と言われる理由
記事作成日:2021年9月2日
金価格の変動は大きいので、金は価格変動リスクを考えると明らかにリスク資産です。価格変動の大きさからは金は安全資産ではないです。しかし、実際には金は安全資産と呼ばれることがあります。なぜかというと、金は、投資家の不安心理が高まりリスク回避的な動きをする時に、金の実物資産としての価値を見込んで、投資家の資金の逃避先となることがあるためです。
金は、投資対象となりますが、金という実体がある資産、実物資産(現物資産)です。金そのものに価値があり、更に金は過去から現在まで時代が変わっても普遍的な価値を持ち続けてきた資産です。
そのため、金融資産との対比で考えた場合に、金は実物資産として一定の価値が保持されるため、安全資産として資金の逃避先になりえます。ただし、実物資産が全て安全資産と呼ばれる訳ではありません。金の実物資産としての特殊性が、金を安全資産と呼ばせることがあるのです。
スポンサーリンク
金は安全資産ではなくリスク資産
リスク資産か安全資産かは、その資産の価格変動リスクの大きさ、将来の収益の不確実性の大小で区別します。金は市場(ドル建て)での価格変動が大きく、価格変動リスク、将来の収益の不確実性の大きさからは、明らかにリスク資産であると言えます。円価格に換算する場合は為替変動リスクも含まれることになるため、円建ての金価格の価格変動リスクはとても大きくなります。当然、元本割れリスクもあります。
金はなぜ安全資産とされるか
金は価格変動の大きさからは明らかにリスク資産であるにもかかわらず、安全資産と言われることがあります。これは金が実物資産としての特別な価値を持っていると考えられているためです。
金は希少性を背景とする価値がある
金の価値は希少性にあります。地球上に存在している金の量は限りがあるという点が金の価値を支えています。いくらでも産出できる資源であれば、需要があっても価値はそれほど高くなりません。しかし、金の埋蔵量は有限です。一方で、金は宝飾品としての需要、工業製品の原材料としての需要、通貨価値の裏付けとしての中央銀行による需要などがあります。
金は実物資産で価値がゼロになるとは考えづらい
株式や債券は発行元が破綻した場合などには価値がゼロになることがあります(かつては株券や社債券が紙くずになると表現されましたが今の株券や債券は通常電子記録化されています)。しかし、金が人類の歴史で価値を持ち始めてから現在までのところ、実際の経済・社会で一定の需要がある金の価値が完全になくなったことはありません。
金の採掘コストが下値の支えに
金は金の鉱脈を見つけて、金を含有する鉱石を採掘し、金を含む鉱石から金を取り出す必要がありますが、使用可能な状態の金になるためには採掘などの各種コストがかかります。一方、金を取引する市場では、需給動向などによって金価格が変動しますが、仮に市場の金価格が採掘等のコストを下回る価格まで下落すると割安感が出て買われることになるため、採掘などのコストが下値を支えることになります。そのため、金の実物需要がある限り、価格が底堅いとも考えられます。
金はインフレに対しても強い
現金や預金の価値は物価が上昇すると実質的に下落します。同じ10000円でも、何かが1つ100円の時と物価が上昇して1つ200円になった時では買える数量が異なるからです。しかし、金は実際の需要に支えられる実物資産なので、物価が上昇すれば金価格も物価上昇に伴いある程度値上がりする可能性があると考えられ、インフレにも強い資産と考えられます。
金が投資家資金の逃避先に
以上のように、金は株式や債券などと異なる実物資産で金の実物そのものに一定の価値があると考えられています。そのため、金融市場が混乱し、金融資産の価格が下落する際には、投資家が投資資金の逃避先として金を選ぶことがあります。そのため、金が安全資産と呼ばれることがあるのです。
金にも換金性の問題がある
金は現物資産なので、金自体ではモノやサービスを購入するのは困難です。物々交換で金を支払い手段として受け入れてくれる可能性はありますが、現金に換金しないといけないため、現物を換金する流動性の問題があります。通常は金の換金性は高いので問題はありませんが、金の商品価値に疑問符が付いた場合には換金しづらくなるリスクが全くないとは言えません。金を安全資産と考えていても、何かのきっかけに換金できない問題に直面するリスクもあります。
まとめ
- 金は価格変動の大きさから見たらリスク資産ですが、安全資産だと言われることがあります。
- 金は実物資産としての価値があり、金融資産が下落する際には、実物資産としての価値が評価され投資家の資金の逃避先となることがあります。そのため、金は安全資産だとされることがあります。